試験休みの予定
ところで気になるのは……。
「職員室に何か用事ですか?」
「桜さんがここに居るのでは無いかと思いまして、だったら暇つぶしのお付き合いにと参ったのですが」
何でも知ってるなぁ。先生に聞いたりしてるのかな。
同じバイト先の先輩後輩だというはもうみんな知っているし、華ちゃんから“お姉様”と呼ばれているのも、教師含めて当然みんな知ってる話。
優等生だから先生とも話しやすいんだろうし。
「かえってお邪魔でしたかしら?」
「そんな事は無いですが」
――ところで。あやめさんがふと、真面目な顔になる。
「明日以降から少し気を引き締めて下さい。華さんにもそのように……」」
何処まで素なのか、未だに良く分からない人なのではあるが。
多分ここに来たのはそれを話すため、か。
「でも。学校、試験休みでは……」
「一部ですが部活もあるので、学校自体は開いているのですよ? 図書館も開くというので、わたくしは読書にいそしもうかと思っているのですが。良かったら桜さんもご一緒にいかがです?」
「つまり……」
「……あまり人が居ない方が都合が良い、そういう事では無いのかと個人的には考えています。大葉さんが気が付いた日をちょっと調べてみたのですが……」
彼女が調べた限り。
その日の授業は特別編成で午前のみ、部活も無かったらしい。
大葉さんが気配に気が付いた時間はほとんどの生徒は、だから校内にはほぼ残っていなかったはず。
あやめさんが言うのは、明日は状況がその時とほぼ同じだ。ということ。
「こないだの話、学校を使ったのは単純に広い場所が使いたい、そして吸い上げる人の意思がたくさん見込めるところ。魔法使いはやっぱり外部の人間、そういう事ですか?」
「そこまではまだ。……但し、外部の人間が入り込むにはやはり学校は難しいですからね。学生か教職員と言う線は、そう間違ってはいないとも考えるのですが」
「でも、なんで図書室……」
「わたくし達は部活には所属していませんからね。学校に来る用事がそれくらいしか思いつかなかっただけなのですが……。まぁ、華さんに関して言えばおそらく用事はできることでしょうし」
「なんかあるんですか? 華ちゃん」
「桜さんが気に病むようなことではありません」
――それに。すうっ、と目が細くなる。華ちゃんさえをも一蹴する程の国内最強、クラスA+の魔法使い。
普段は全然そうは見えないが、この人はそう言う人なのだ。
それを改めて思い出す目の光り。
「図書室の入り口脇の閲覧テーブル。あそこからなら例の場所の様子が見えるのです。気配を感じたらすぐに目視で確認出来る。……さらに言えば」
「……はい」
「図書館に司書の人が来て居るのなら、エアコンが効いていますしね」
「さいですか……」
明日は真夏日の予報が出ている。そうでした。
「では、わたくしはこのへんで。細かいお話は、後ほど事務所の方で致しましょう」
「あの、もう華ちゃんも出てくると思うので……」
中でごそごそと音がし始めた、椅子を立った、と言う事なんだろうと思う。
「多分わたくしは居ない方が良いでしょう。本当のところを言えば慰めてあげたいのですけれど、立場的には文句を言わなくてはいけない損な役回りですから。なのでそこは桜さんに一任致します。……では、また後ほど」
相変わらずつかめない人だなぁ、と思って背中を見送っていると職員室の扉が開く。
……涙目の華ちゃん?
「……ど、どうしたの?」
「ごめんなさい、桜……」
それ以外言わずに、身長差を無視して体を折り曲げ私の胸に顔を埋めて泣き出してしまった。なんて珍しい。
は! ……まさか! 結局赤点に戻ってしまったとか!
「どうしたの? 泣いてちゃわかんないってば!」
「あなたの護衛の仕事があるのに、せっかく二人に教えて貰ったのに、……明日から3日間補習だと……うぅ、ぐす。本当にごめんなさい……!」
単にそれだけで済んでホントに良かったね。
……って言うかあやめさん、これも知ってたなっ!?
「あのね、気にしなくても良いからね。がんばったんだから、足りなかった分を教えて貰えるだけなんだから、泣くことは無いんだよ、ね?」
仕方が無いので頭に手をやって慰めてあげる。
なんで同じシャンプー使ってるのに、華ちゃんの髪の毛はこんなに、サラサラでふわふわなのよ……。
いずれにしても明日から3日間、学校に来る用事は華ちゃんに限っては出来ちゃったわけで、私は図書室で補習が終わるのを待つ。
と言う感じになるのかな。
まだ夏服の季節にはならないけれど、ここ数日、結構日差しがキツい。
明日はエアコン、本当に入ってると良いけどなぁ。図書室。




