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真説・公園の魔法使い  作者: 弐逸 玖
うつくしヶ丘中央公園 ジェラートの屋台
3/66

従兄弟

「だいたいさぁ、――また変な噂が立ったらどうすんだよ……」

「結婚できる、っつーのと結婚する、ってのは話が全然違うでしょーよ」

「当たり前だっつの……。お前も少しは気にしろよ、ホント」



 いつも一緒にいる事が多かったので、小さな時からその手の噂には事欠かない。

 ……みんな従姉妹同士、って言うシュチュに妄想抱きすぎでしょ。

 兄弟のいない子達が抱く、レディコミ的兄弟妄想とそれは、大差がない。


 でも、気持ち悪い。とは少し違うな、なんだろ。



「従兄弟同士でも結婚出来る、って周りのみんな、全員が知ってるのもどうなんだろ。……日本では3親等内の血族の結婚は禁じられています、でも従兄弟は4親等。おっけー。みたいな?」


 だいたい。なんで私がコイツと結婚せねばならん。


「だから……。お前は、少し気にしろっ、つってんだよ。聞けよ、人の話」 



 彼とは家の近い事もあり、ほぼ兄妹のようにして育った。

 双方の両親ともサービス業の共働き、と言う家庭であり、だから普段の日もそうだが土日。

 お互いの両親、四人のうち誰かはお休みなので。

 お互いの兄妹ごと、ほぼ一緒に居ることが多かった。


 彼は私の弟を、実に可愛がっている。

 そして彼のお姉さんからは買い物や映画に誘われるし、悪い事をすれば両親よりも強烈な雷を、泣きながら落とすのはいつだって彼女だ。

 頼りがいのある優しい自慢のお姉ちゃん。


 だから仁史と私。兄妹きょうだいみたいな、と言葉では言うものの。

 ある意味普通の兄妹よりも、よほど兄妹っぽいかも知れないな。

 割合、本物の異性の兄弟って、あえて距離を取っている人が多いと思う。


 もちろん関係は友人よりは近い。そりゃそうだ、じいちゃんとばあちゃん一緒だもの。

 当然。付きあってるとか言われたら、もちろんノーだけど。

 ……でもさ、そんなの。



「噂したいヤツにはさせときゃ良いじゃん。……ほら、良くあるパターンでさ、幼なじみの男の子に“おっきくなったらお嫁さんになってあげるね”なんて。――私、一回でもアンタに言った事ある?」

「例え幼稚園の時に言われようが、そんなのはこっちから願い下げだっつの」

「あっそ」


 幼稚園から始まって、家が近所であるので公立に通う以上は当然、小、中と同じ学校。

 そりゃ、もちろん。小さい時はお風呂だって一緒に入ったよ。

 だからなに? それって兄弟とか従姉妹とかなら、普通じゃ無い?

 他のみんなは入らないの? 一緒にお風呂。


 過ぎるほどでは無いにしろ、仲が良いのは本当だし、従兄弟同士ならお盆やらお正月に実家に帰る、となっても目的地は同じ。

 大きなワゴン車を借りて、八人乗ってギュー詰めで帰ることだって珍しくなかったし。

 当然、普通の友達よりは一緒に居る時も多い。


 だからお年頃になるとそう言う噂も普通に立つし、でも。

 そんな話は気にする方がどうかしている。と、私個人は思って居る。


 実際はどうなのかなんて、本人に事情聴取するまでも無く見りゃあ分かる話じゃないか。と、私なんかは思うんだけど。



 でも、それに関して。実は仁史は実害もこうむっていて。


 彼が中学の時、初めて告白した相手にフラれた。

 はっきり言わないから、もちろん具体的には知らないんだけれど。

 どうやらその理由の中に、私の存在が含まれていたらしい。


 断る理由なんて、本人が傷つかない様なものを考えるに決まってる。

 直接、

 ――あんたの顔がどうしても好きに成れないの。

 なんてことは、立場が逆でも私だって言わない。


 こう言うのを“風評被害”って言うんだろうな。良い迷惑だよ。


 まぁ私の考えはともかく。

 少なくても、本気で相手が「あなたには桜が居るから」と思っていた。

 と、言う可能性もゼロでは無く。


 関係ないとは言いつつも。それについては多少悪い事をしたな。

 なんて。実は今では少し思ってはいる。


 でもきっと。その事について正面切ってごめんなさい、って言うことは多分無い。

 だって、なにを謝るって言うの?

 私が悪い部分、どう考えてもゼロ。ちょっと可愛いだけじゃんか。 


 だから、罪滅ぼしでは無いが。

 仁史が好きだ! と言う子が近所に居るなら、その時は是非背中を押してあげようと思って居るし、逆もまた然り。


 仁史に気になる子ができて、それが私の友達だったというなら。

 二人でお話しできるとこまではセッティングしてあげよう、と思っている。

 

 だって、一歩引いてみると。結構なお買い得物件なんだよ、コイツ。

 顔はお父さんに似て結構いい男の部類だろうし、まぁベタではあるけど優しいし。

 マイナス要素とすれば、結構な頻度で顔を合わせる従姉妹に私がいるところくらいなもの。

 これだって考え様によってはむしろプラスである可能性も有り……。



「あ、ほら。あそこ。屋台に使ってる車が珍しいヤツだって聞いたからさ、仁史に見せたかったんだよ。――ジェラート、おごってあげるから。機嫌直してさぁ」

「……カングーを改造して使ってるのか。珍しいと言えば珍しい」


 クルマと野球が好きな高校生。

 そこそこ男子としては見られるんじゃ無いかな、と思うんだけど。

 私と噂になるくらいに女っ気が無いんだよなぁ、コイツ。

 まぁ、私とも顔の作りが似てるけど、それはむしろ可愛い顔してるってことだしね。


「こんな遠くから分かるんだ。……アレって外車なの?」 

「ルノー、聞いたこと無いか? フランスのクルマだ」


「ハンドル右だけど」

 女子の人気もまぁまぁなのに、自分から何とかしようとしないのは。

 ……過去のトラウマか! 私のせいなのか、これ!?



「ベンツだってビーエムだって右ハンドルのヤツ、あるだろ?」

「日本専用モデル的なもので作ってんじゃ無いの? あーゆーの」

「フランスでもドイツでも同じカタチのクルマ、普通に走ってる。中身だけ左右反転してるんだ」

「……そうなんだ」


「――ジェラート、か。姉ちゃん、好きそうだが」


「送ってあげるわけにもいかないし、写真送っとこ」

「それはむしろ嫌みなんじゃないの?」


 お姉ちゃん、おいしそうな料理とかの写真、良く送ってくるんだけど。

 アレは嫌みだったのか……。

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