気晴らしの方法
「うーん、坊やともっと仲良くなりたいかぁ……焦ることは無いと思うけどね」
「このままだと私だけ置いてけぼりな気がして……」
「坊やはそんなことしやしないさ、今はただ忙しくて色んな事に気が回らないだけなんじゃないかね」
確かにそうかもしれない、旅の街に戻ってからというものリューくんは以前にも増して鍛冶仕事に精を出すようになった。お金の問題も勿論あるが、親方さんから貰った剣に感銘を受けたとかで真剣に修行に励んでいる。
クーちゃんは旅の街に戻ってからは細工師の仕事に就いている。海の街で仕立ての仕事をしていたことで細かな作業に目覚めたらしく殊更に細かな仕事にのめり込んでいた。
「お嬢ちゃんも何かやりたいことを探してみたらどうだい?持て余した時間のなかで独り悩むよりはずっといいよ」
そう、ともすれば自分が一番真剣に悩んでいるのに誰も向き合ってくれないと被害妄想を抱きかねない状況だった。誰が悪いとか、誰のせいということはない。全て私の気の持ちようの問題だ。
リューくんは私に冷たいか?いいや
クーちゃんが構ってくれないか?そんなことはない
全て私の考えすぎなのだ。ミーシャさんの言うとおり私も何か始めてみるのが良さそうだ。リューくんやクーちゃんの為にもなるような何か……パパと話してみようか。
「ミーシャさんありがとう、私なりに何か出来ないか探してみます」
「あまり気負いすぎないようにやんなね」
私は夕食の買い物を済ませて家路につく、すると仕事帰りのパパとたまたま出会した。
「おお、サニア。お前も帰りかい」
「パパ!お疲れ様~」
「最近、色々と悩んでるようだね。パパで役に立てることはないかい」
「うーん……」
「リュウのことなら心配いらんぞ?素っ気なく感じるかもしれないが単に忙しさにまいっているだけさ。若いうちはそんなものだよ。もう二ヶ月もすれば忙しさにもなれてくるさ」
「うん……ただやっぱり余計なこと考えちゃって……私も仕事始めたりすれば気が紛れるかなって」
「そうだなぁ、パパの方でも心当たりに声を掛けてみるよ」
パパと話ながら歩いていると酒場の前で大きな声で話し込んでいる冒険者達の声が耳に入る。
「それ本当なのか?ガセじゃねぇだろうな」
「いや間違いねぇ情報さ、西の山賊が隠したお宝が奴らの住処の近くにあるらしい。そもそもおかしいだろ?全員しょっぴかれてアジトをひっくり返しても金貨の一枚だって出てこなかったんだ」
「それで、どっかに隠してるに違いねぇってわけか……山賊征伐に破格の報奨金、更に隠し財産を見つけて大金持ちってか。場所はわかってんのか?」
「奴らの住処から山を迂回して南に下った廃村らしい。そもそも奴らが皆殺しにして滅ぼした村だからな、山賊連中以外そうそう近付かん。物隠しには最適だろ」
隠し財産……か。お金に余裕があればリューくんやクーちゃんにも時間ができるだろうか。三人で悠々自適な暮らし……悪くない
「サニア、何を考えているのかしらんが危ない真似はいかんぞ……せっかく生き返ったんだから」
「あ、うん。そうだよね……何かあればもう普通に死んじゃうんだよね私……」
流石に一人でいくのは無謀だろう。それにここから西の山脈まではかなりある。旅をするにも費用、期間、人手が足りない。あまり現実的ではなかったか。こうして私が手をこまねいている間に先ほどの冒険者達がきっと財宝を見つけてしまうのだろう……
ふと、閃きを得た。そう大したものではない、頭の上で電球が光る程度の閃きだ。よくよく考えてみれば一瞬であそこまで行く手段も人手もあったことに気付いたのだ。旅程も日帰りで充分なので費用もかからない。更に危ないときにも頼りになる人がいる。
私は穀潰し二人にひとつの提案を持ちかけることにした。