表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

神の啓示

 元神様のカーミラさんのことだから、人間の倫理観とはかけ離れたことを言うのではないか……という不安こそあるが、リューくんについて最も詳しい彼女に聞かない手はない。


 そう、あくまで参考にするだけだ……鵜呑みにした日には私という個人が社会的に死にかねない。


「二人でお出掛けしてみたらどう?やっぱり二人の時間がないと中々アピールできないよね?」


 あれっ?まともだ。


「ふ、二人でお出掛けかぁ……どこがいいかな」


「じゃあキルケーに頼んであちこち下見してみよう?リュウくんが喜びそうなところ、きっと見つかるよ!」


 転移魔法で下見に出掛けられるのは助かる、私はカーミラさんの提案通り三人で下見に出掛けることにした。



「じゃあまず……そうだ!あそこがいいかも!キルケーよろしく!」


「はぁい、それじゃサニアちゃん、神様、もっと僕の傍にきてほしいの」


 指示に従いキルケーちゃんの傍に近付くと私達は真っ逆様に落ちていった。



「それで……ここは?」


 澄み渡る空、すこし薄いが美味しい空気、どこまでも広がる花畑、ひらひらと舞う蝶、楽しそうにお喋りをする妖精さん達、そして忙しそうに飛び交う天使様……


「神界」


「二人で来られないから!」


「僕が送ってあげるの」


「帰って来られないから!!」


「ダメかぁ」


「駄目だよ!そもそも生身で来て大丈夫なのここ……」


「僕も神様も生身なの、平気」


 空を行き交う天使様の一人がこちらを見て明らかに怒った顔している。目が合うと何処かへと急いで飛去った。


「あっ、見つかった。キルケー次!次!」


「あ、はぁい」


「見つかったらやばいようなところは平気じゃないでしょ……」


 そう呟くと同時にまた私達は落ちて行く……次は一体どこへ……



 目を開けると、そこは見たことのない商店街だった。かなり規模も大きく珍しいものも幾つかある。きっとここでの買い物は楽しいに違いない。リュウくんと一緒にこの商店街を見て回る自分を想像するとにやけてしまいそうだった。


「それで、ここは何処の街なの?」


「隣国」


「来られないから!西の山脈越えなんか無理だから!」


「僕が送って――」


「だから帰って来られないってば!」


「また駄目かぁ……」


「そもそも遠過ぎるよ!お休みの日じゃないとお出掛け出来ないから、せめて一泊程度で……」


「あっ、お泊まりしたいの?それじゃキルケー次ね」


「はぁい」


 またまた落ちていく……



 ここは見覚えがある。宿場町だ、遠すぎて来られないんだけど……


「あのねぇ……カーミラさん――」


「有った!ここ~!」


 休憩銅貨五枚 御宿泊銀貨二枚とある……これは……


「カーミラさんこれ前もやったよね……リューくん呆れてたのに……」


「あれ?違った?」


「健全なのでお願いします!!」


「えー……じゃあキルケー次ね」


「待って待って!転移魔法前提の場所は無し!無しね!」


「次は森の都の北にある山の山頂の予定だったんだけど……夜景綺麗だよ?あと朝陽も」


「行き帰りが冒険なのも無しで……」


「それじゃあ旅の街しかないよ?」


「旅の街近辺でいいんだってば……」


 リューくんが神族関係の人と関わると碌なことがないと言っていた意味が今やっとわかった……


「うーん、それじゃキルケー次ね」


「はぁい」


 私は言葉もなく落ちていく、この作戦は失敗だわ……



「あら?サニアお嬢ちゃんじゃないか。今日はどうしたんだい?」


「あれ?ミーシャさん?」


 ということは、ここは旅の街の仕立屋さんか。それにしてもどうして……


「リュウくんに可愛い服を選んで貰うのはどう?それで買って貰おうよ?」


「えぇ……それはちょっと……」


 実のところ、我が家の生活費はパパとリューくん、そしてクーちゃんが稼いでいる。私とママと家事を、この食客二人は穀を潰しているだけだ。つまりおねだりは家計を圧迫しかねない……


「男の子って頼られると張り切るものだよ?それにこっそりプレゼントを買っておいて後で渡すのもいいかもね?」


 そのお金は結局三人が稼いだものなので……


「坊やにプレゼントかい?この鍛冶用の革手袋なんかいいんじゃないかね?厚手だし丈夫だよ」


「これでリュウくんにお仕事頑張ってもらお?」


 やっぱりちょっとイライラするな……とはいえ作戦としては有りな気がしてきた。第一候補にしよう。


「また後で来ますね、ミーシャさん。お金持ってこないと」


「ああ、いつでもおいで」


 仕立屋さんを出た私は店先に農具を並べているリューくんとばったり出会してしまった。すこしばつが悪い……


「あっ、さっちゃんどうしたの?買い物かな」


「ええと、まあそんなところ」


「サニアちゃんがね?リュウくんとのデートの下見がしたいって言うからあちこち見て回ってたんだよ」


「ちょっと!何で言っちゃうの?!」


「えっ、だめだった?」


「僕とデート?そんな約束してたっけ……ごめん」


「えええと!そのまだっていうか何ていうか……カーミラさんほんと何なの……」


「ええ?リュウくんサニアちゃんとデートしたいよね?」


「うん?それはまあもちろん……」


 でかした、でかしたよ神様


「それじゃ次の休みにね?リュウくんいい?」


「あ、はい。いいですよ」


「やったぁ!カーミラさんありがと!」


「御礼なら祝福(キス)でいいよ?」



 そして待ちに待ったリューくんのお休みの日が来た。私は浮き足立つ気持ちを必死に抑えて家をでる。そこには一足先に支度を済ませたリューくんが待って――


「遅いよサニアちゃん」


「……なんでカーミラさんもキルケーちゃんもいるの?」


「えっ、これから神界デートでしょ?」


「行かないよ!!」


「……神界に何しに行くつもりなんですか神様……」


 やっぱり相談する相手を間違えていたか。こういうときは大人の女性に話を聞くべきだ。この騒ぎが終わったらミーシャさんに相談してみよう……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ