プロローグ 夢の終わり
華彩との別れを終えて家に帰ると家の中で妹が全裸だった。
「あ、兄ちゃん」
まあ、自分の家なので全裸になることもそれはできるのであるが、しかし僕の妹はそういうキャラでもないし、裸族でもないのだった。
別のいいんだが、違和感の方が大きいというか。
僕は妹の裸で興奮できるようなタイプの人間ではないので極めて冷静に対処する。「ただいま」といつものようにつぶやいた。
思春期、なのだろうか。自分の体が気になる、とか。そういう…。
「兄ちゃん、なんか夢乃、体が熱いの」
僕はかなり焦った。
というのも夢乃は体が弱い。大きな病気になることはないけれど定期的に熱を出したり、風邪を引きやすいのである。熱があるならそんな恰好をしている場合ではないのだ。乾布摩擦をしようとしていたのだろうか。乾布摩擦は風邪予防であって風邪を引いてからでは遅いのである。
「夢乃、服を着てゆっくりやす、め」
なぜか、夢乃がねっとりとこちらに近づいてくる。
確かに熱があるのか頬が上気していて、赤く、火照っている。
「ゆ、夢乃?」
「んーん。なんか熱とかじゃないみたい」
そのまま僕に、覆いかぶさってきた、全裸で。
このシーンを誰かに見られたら人生が終わる。押し倒されて、夢乃が僕の上に馬乗りになる。僕も僕で無抵抗だって。いや、だって、なんでこんなに艶めかしいんだ。落ち着け。落ち着け。
「夢乃、どいてくれ」
「ちゅー」
夢乃が僕の頬にキスをした。
僕のような百戦錬磨の男からすれば妹のキスなんて別になんとも思わない。親族だし。ドキドキも特にしない。そういうようにできているのだ、体が。遺伝子が。はあ、お前は一体何をしているんだ。兄としてそう諫めることとし「いひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」
思わず、声、が、叫び、が。
とんでもない快感が頬を襲う。キスをされた頬が痙攣して、あまりの気持ちよさに、僕は叫んだ。
し、死ぬ。気持ちよすぎて死ぬ。このままでは妹に殺される。
「ゆ、めの…」
「ねーえ、兄ちゃん」
いつもと雰囲気が違う。
呼び方もなんだか、とても。
「兄ちゃんは夢乃のことすき?」
「好き」
即答だった。
兄として当然だった。
「じゃあさ、じゃあさ」
夢乃の背中からひらひらと何かが動いている。羽、に尾。悪魔のような黒い羽、蝙蝠のような羽に、矢印のような尾がお尻から。
まるで、悪魔のような。
しかし、そんな変化に気付いているのかいないのか妹は、夢乃は楽しそうに無邪気にこういうのだった。
「兄ちゃん、夢乃とえっちしよ?」
第13話 ゆめのサキュバス① へ続く
よろしくお願いします。




