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オーガ
「それでどうなったんだ?」
顔を寄せて聞き入っていた車掌がふと呟いた。僕は車掌の口臭に顔を背け、息を止める。鼻が過度に利くというのは短所ばかりだ。
「――過去が固定された」
「そうだろうな。俺が言いたいのは、都合が悪い過去でもあったのかということだ」
「色々とね。僕たちの敵が他にもいたのを忘れてた」
「他? 豚と猿か?」
笑いを堪える車掌に、少しムッとする。でも、訂正すべきところはしっかりと訂正する。
「それだけじゃない。あと、全く豚じゃなかった。ファンタジーで言うところの“オーガ”ってやつ。僕もてっきり“オーク”だと思ってたんだけどね」
「はぁ? どっちが強ぇんだ?」
「断然オーガ。どっちも人みたいに二本足で歩くんだけど、デカいのは5mくらいだった」
「5mだぁ!?」
大袈裟に驚く大人に、ちょっとばかり溜飲が下がる。
「まぁ、もう少しだから黙って聞いててくれよ」
そして僕たちは再び向かい合い、異世界へと旅だった。