7話 不可解
昔、昔かなり昔の話だが人間は翼を作って空を飛ぼうとした話を聞いたことがあった。
なんでもその翼は蝋で作ったもので、いざ飛ぼうとしたら太陽の熱で蝋が溶け、最終的にはその人はそれが原因で墜落死したとか…。
ようするに人が空を飛ぶなんて夢のまた夢なんだ。そう思っていた。いや、だいたい常識からして人は無理だと思っていたーーーーーーーーー。
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うん。オレは一体どうなっているんだ…。
足にはいつも慣れしたんでいる地の感覚はない…。
周りには建物らしきの屋上だったり
下を見ると瓦礫の山がいくつもある。
ああ…。あれか…。これは俗に言う空を飛んじゃってる!ったやつか…。
稔は今やっと落ち着きを取り戻し、自分がこのような状態になっているのを理解し、どことなく納得していた。それには理由があるからだ。
たぶん、この女の子の力だろうな…。
自分の腕をしっかり掴んでいる白髪の女の子を見た。見事なまでに整った、普通に見てキレカワイイ顔だった。
まぁ…あの化け物を斬ったんだから、空を飛ぶのもできちゃうんだろうな……。しかしすげぇな…。
稔はたぶんもう二度と味わえないだろう空の旅を噛み締めていた。
「………ん??」
稔はあることに気づいた。
妙だな…。周りが…いや…これは自分が落ちている!?ちょっっと待てててぇ!!
「ちょっと!!落ちてきてますけど、大丈夫なんですよね!!??」
稔は慌てて、自分の腕を掴んでいる白髪の女の子の方を見た。その女の子は慣れているのか、平然とした顔で、
「大丈夫に決まっているから、こんな跳躍してるんでしょ!」
「へっ!?ちょうやく?」
「さすがに空を飛ぶなんては私には無理よ!着地して、またすぐにジャンプするからしっかり捕まっておいてね?」
次の瞬間、ゆっくりと落下していた稔達だったが、落下してゆくスピードがだんだん加速していった。
「ぎぁぁあああああ!!!」
稔は意外にもバンジージャンプに近いアトラクションみたいなものをすでに体験していた。が、今、稔が落下しているスピード、高さ全てにおいて、昔稔が体験したのが、赤ん坊のように可愛く思えた。
「ちょょおおおお!!!じじじめめんんんんんんー!!死ぬぬぬぬぬぬううううううう!!!」
地面がだんだん近づいてきて残り10メートルくらいとなり、白髪の女の子は、いつから持っていたのか、そこそこ大きくて、厚い鉄の板を自分の足元へと持っていき、その鉄の板を踏み台として上へとジャンプした。その結果、落下していた勢いが無くなり、普通に着地することができた。
「ハァ…ハァ…寿命が確実に縮んだ…。この人…絶対人間辞めてるよ…」
この完全に人間離れしている行動に稔は死を覚悟したほどだった。
「なにか言った?」そう言って白髪の女の子は稔の方を向いて満面の笑みを浮かべた。
「いえ、なんでもないです。」
その可愛い満面の笑みが稔にとっては恐怖にとってしかなく、とても死を覚悟したなど言えそうになかった。
「もう…まったく…。ま、いいわ。またジャンプするからしっかり掴まっておいてね!」
そうして、白髪の女の子は稔の嫌なそうな顔を無視して、また大ジャンプをした。
いや、これジャンプなの…。と、稔は思って嫌々ながら稔たちはゆっくりと人が歩くスピードぐらいで上へと上がっている。
ブツブツと稔は愚痴を溢しながら、ゆっくりとジャンプの最高地点まできた。高さは山の頂上から街を見下ろしている、そのくらいだろうか。
2回目の経験だった稔は少し余裕ができ、カゲ人間がいる学校を見て、
そして稔は、少し気掛かりになっていたことを自分の腕を掴んでいる白髪の女の子に聞いた。
「さっきから、カゲ人間2体が同じ場所にいるんだけど…」
白髪の女の子は首をかしげながら、
「さすがに変ね…。カゲ人間が共に行動するのは人間がいた時だけけど…。そもそもあなた以外の人はもうとっくに避難しているわけだし…
だいたい普通の人はカゲ人間からは逃げのがれないからね…まあ人間がまだいるとか最悪の事態はさすがにもう無いでしょうね。」
「そうだよな…。」
2人で今カゲ人間に起こっている不可解な行動を話した。稔は少し気掛かりの事があったが、まさかなと思って言わなかった。
そして2人は学校の方へと落下していくのであったーーーーーー。