5話 初めての出会い
「ーーーーーーこの少年はーーーーーー?」
微かに聞こえるどこか優しい声だった。稔はまだ、覚醒しきれていない状態のなか、ぼんやりとその声を聞いていた。
「ええっと……。カゲ人間に襲われていたから救いだしただけ」
ああ……。そうだ…。確か……。
稔は気を失う前のことを思い出した。
カゲ人間に追い詰められて、一度は心が折れてしまったが、ある約束を思い出し、そしてその約束に心が立ち直ったこと。
カゲ人間に取り込まれそうになったとき、目を閉じていたのでよく分からなかったが、目を開けたら、目の前にいたカゲ人間が真っ二つになっていて、そして隣に長い白い髪をしていた女の子が立っていたこと。
ああ…。そういや、あの女の子にお礼を言わないといけないなぁ…とそんなことを思いっていたら、
「わかんないことだらけだな…。
よし、起こしてみるか!」
そんな幼そうな声が聞こえた。
次の瞬間、
バチーーン。左ほほに強烈な、痛みの衝撃が走った。脳が遅れて何をされたのかを察知して、半覚醒状態だった意識が無理矢理に覚醒させた。
「いっっっててぇぇえええーーーー。」
あまりの痛さに稔は飛び跳ねて起きた。
「だれだよ!!こんなバカ痛いビンタしたやつ!!」
ビンタされた左ほほを擦りながら稔は声を張り上げた。
「私だけど」ビンタをした張本人が名乗りでた。
それは長い青髪をしていて、服はあの白髪の女の子と同じ格好をしているが、背丈が低い。ざっとみ、13か14くらいかな。そして、きっちり揃えられた右手は、ビンタしましたよ感がプンプンに出していて、ドヤ顔していた。
「いってぇな!どんな力してだよ!このロリ!」
「誰がロリですって…!?」
稔とその青髪の女の子が睨み合っていると、
「こら!2人ともケンカしないの!」
「そーですよ。小花ちゃん。力加減をもう少し考えなさい。」
そう言ってきたのは、長い白髪をしている女の子と、紫色髪をした、これはどちらかというとショートというべきかの女の子…いや、多分この人は20越えているな…女の人としておこう。その2人が割り込むように稔と小花の前に来た。
そして、この2人もまた同じような服装をしていた。
「ごめんねぇ~。うちの小花ちゃんのせいで…。痛かったでしょ?」
そう言ってきたのは、ロリっ…じゃなくて小花と呼ばれている女の子の方を割り込んできたときは向いていたハズの紫色髪の女の人がいつの間にか、稔の隣に来ていた。それに驚いた稔はさっきまで言い争っていた相手、小花をみた。倒れていた。
「えっ!?」
「小花ちゃんはバツとしてちょっとオチてもらったの~♥」
稔が倒れている小花にきづくのを察して、その紫色髪の女の人は、満面の笑みでそう言った。
ば、化け物だ……。稔の本能がこの人はキケンだと瞬時に判断した。
だが、この女の人はお構い無く稔に抱きつこうとし…。
「もう、マイさん。最年長らしく態度を振る舞ってください。」白髪の女の子が一喝。
ぶーぶーといいながら、紫色髪をした女の人は稔から距離をとった。
この白髪の女の子は自分と同じ年かな?いや、少し上かな?それより、かわキレイだなと、稔はそんなことを考えていた。
「な、なに?何か変なのがついてあるの?」
何故か少し怒っている口調で白髪の女の子に言われてしまった。
「…いや、なんでもないです…」
ごほん。白髪の女の子がわざとらしく咳払いをし、
「さて、まず状況を整理しましょう」と、いって1人まだ寝ている人がいるが、3人で円になるようになって会議が始まった。
「大方、カゲ人間は片付けたけどけど、数が何故か多かったわね…それに…」白髪の女の子が上を指して、
「まだ空が黒いから、まだこの街にいるのでカゲ人間に気をつけてくださいね…」
「あの~すみません。」稔が手を上げて白髪の女の子に、質問した。
「あの…もしかしたら、あなた達は、国が国家機密にしている対カゲ人間のエキスパートの方ですか?」
そしたら、白髪の女の子と紫色髪の女の人が寄せ合って、「どうします?」「もう教えてもいいんじゃない??」「ですが…」「ゆなちゃんの話を聞いたらもうあの子は入隊決定よ」などと、こそこそ話しているのが聞こえた。ちょっと待て、入隊決定ってなんだよ。
「そうですね。多分、決定でしょうね。」
いや、だからなんで決定だよ。そんな稔の気持ちなんて知るよしを無く、勝手に話が進められて、
「そうです。私達は防衛軍特殊戦闘班のものです。」
「まぁ簡単に言いますと、あなたがさっきおっしゃたエキスパートみたいなものですわよ。」
白髪の女の子が稔に対しての質問を答え、紫色髪の女の人が補足で付け加えた。
おいおい、まじか。この女の人達によって今までこの国は守られていたのか。稔はそう考え、多少なりと衝撃を受けた。
「あなたのことは、ゆなちゃんから聞いているわ。逃げおくれたのでしょ?」
「まぁ…はい。そんな感じです。」
と答えた稔は周りを見渡し、
「ここ、俺が気を失った場所ですよね」
「そうよ。あれから結構な数が来たのよね。ホント大変だったなー。」
白髪の女の子がわざとらしく、言っているのは目に見えて分かっていたが、稔はこの子に救われたのだ。
「ホントにありがとうございました!!」
見事なまでのキレイな土下座。自分でもこんなキレイな土下座生まれて初めてだ。
「い、いいって。土下座までなんて…」
まさか土下座までするなんて思ってもいなかった白髪の女の子は必死になって稔に頭を上げるように言った。あまりにも必死になって、言われたので稔は渋々立ち上がった。
「じゃあ、作戦を練りましょうか」と白髪の女の子が中心となってまた話が進められた。
「あとどのくらいカゲ人間がいるか分からないし、場所だって…」
「ゆなちゃんのいつもの直感はどうなの?」
「ダメみたいです…」
2人が悩んでいるのを見ていた稔が手を上げて言った。
「あの~。この街にいるカゲ人間の今いる数と位置、なんとなくわかりますけど…」
「「えっ??」」2人同時に声が重なった。
そして、また
んっん~。気を失っていたもう1人の少女がゆっくりと、目を覚ました。