15話 長い1日
「はあ…食った。食った。」
腹を擦りながら、満足そう稔はつまようじで歯と歯に挟まった食べカスを取っていた。
「さて、満腹となったことだし、話の続きでもしようか。」
「いやいや、なんであんたが仕切ってるのよ。」
稔がソファに座り直して、何故か仕切り始めたら、同じく満腹になって満足そうにお腹を擦っている小花がツッコミを入れた。
「いいじゃねーか。仕切ってみたいんだよ。」
「いや、似合ってないから辞めたほうがいいよ。」
「なんだと!このロリッ子め!」
「誰がロリですって!?」
また始まった…。ゆなと先ほど戻ってきたばかりの咲希は、ゆなのお気に入りのウサギの模様が入ったティーカップを片手に、湯気が立ち上る紅茶を味わいながら、食後のひとときを送っていた。
ギャーギャー言い出した2人を他所にゆなと咲希はテーブルの中心に置かれているクッキーをつまみ食いしながら、今日のことについて話していた。
「ごめんなさい。私のせいでこんなに迷惑をかけてしまって…。」
咲希は避難通路から出てしまって危うくカゲ人間に飲み込まれそうになってしまった今日の自分の行動に対して、謝った。
「いえいえ、そんなことないですよ!カゲ人間から市民の皆さんをお守りするのも仕事の1つですから。まあ、そもそも元はと言えば彼が原因ですけどね。」
そう言いながら、紅茶をすするゆな。同じく、ピンクを基調とした、ウサギのキャラクターが描かれているティーカップの中に入っている紅茶を咲希もすすりながら、
「今までに、私みたいにカゲ人間が襲撃して逃げ遅れた人っていたんですか?」と、尋ねた。
その質問にゆなは少し記憶を思い出させて、
「うーん。そーね。あの天災以来かしらね…。…いや、1人いたね。」
思い当たる人物がいて、微笑むようにしてゆなは言った。
「あっ…。わかりました。わかりましたから。」
その人物が誰なのかを察した咲希はその人物の方を見た。
何故そうなってしまったのかわからないが今その人物は土下座をしていた。
「お許し下さい!!」
その見事なまでの土下座っぷり。
その姿からは呆れしかでてこない。
そこまでの見事な土下座だった。
「………そろそろ寝ましょうか。私の部屋でいいよね?」
「は、はい!ありがとうございます。」
時刻はとっくに23時を回っており、小花に関して言えば稔が「お許し下さい!」と言おうとして「お」を言った段階で、もうリビングを出てしまって自分の部屋へと戻って行ってた。
だから、稔は誰もいないのに土下座をして大声を張り裂けていたことになっていた。
「じゃあ電気消しといてね。」
「おやすみ~。」
バタン。とドアが閉まる音がした。それと同時に稔は顔を上げ、
「…………俺、どこで寝ればいいんだ…」
ポツリと呟いた。
長い長いとても長かった1日がこうして終わった---------。