13話 これを沈黙と呼ぶだろうか
沈黙という言葉がある。
黙りこむこと。物音なくしずかなこと。じっとしていているなどいった意味を持つ言葉だ。
今、この状況はまさしく最初の意味、黙りこむことが該当する。
1人の少女が発した言葉がこの状況を作り上げた。
1人は膝に肘を付いて、そして頬に手をやり反応を楽しむように。
1人は会話に興味なく退屈すぎてウトウトしており。
1人はキリッとした、その真っ直ぐな瞳で見つめ続けており。
1人はもう脳が理解するのが追いつかなくて、一点をぼーっと眺めていて。
そして、1人は………
え、オレが、""カクセイシャ""だって!
てか、その前に""カクセイシャ""ってなに?
なんか物凄く中二臭いんだけど…。
…わかった!あれだろ、どうせ。
主人公のテンプレみたいな、どこにでもいそうな一般市民が突然力に目覚めて、ヒーローになっちゃったとかのそうゆう系だろ。
いやいやいや、もしそうだとしても、あんな超人?変人?しかいない特殊部隊に入るんだろ。そんなとこ入ったら、ボク死んじゃいます。カゲ人間と戦う前にボク死んじゃいます。ま だいたい、何故あの""センベツ""で引っかからなかったわけ!?
しっかりしてくれよ…。
と、1人の少女が発した言葉に心の中で色々とツッコんでいた。
その結果が、この状況。
沈黙になってしまった。
が、その沈黙もすぐに稔の一言で破られた。色々と心の中でツッコんでいたが、とりあえず何か言おうと正面に座っている、ゆなをしっかりと見た。
キリッとした、その瞳はどこか緊張感があるが、やっぱりキレカワイイ顔だな…。ちなみにキレカワイイは綺麗と可愛いを足して2で割ってできたオレのオリジナルワードだ。
まさしくぴったりじゃないか!今年の流行語大賞は決まったな。
稔は心の中でガッツポーズをした。
おっと、いかん。いかん。脱線しちまった。
稔は頭を横に振って、またゆなの方を見た。 そして、自分でも絶対に真面目な顔をしているのを確信できるほどの真面目な顔で言った。
「………すまん。腹へった。」
それと同時に稔のお腹から、ぐぅ~と大きな音が出た。
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「はぁ…まったく。探しましたよ…」
男は、夜風に長い黒髪を靡かせながら、タバコを吸って景色を眺めている人物にそう言った。
「奴らが出現したときに限って貴方がいないから、急遽私が指揮をとるハメになったんですから。こっちの身にもなってくださいよ。」
その男の主張を聞いていた、その人物はひらひらと手を振って答えた。
それを見てちゃんと話しは聞いているのを確認したその男は、今回の襲撃のことについて話した。
「今回は特殊部隊を3名ほど前線へと向かわせました。奴らの数的には1名ほどで十分だったのですがなんせ例の…。
なので、大事をとっての3名です。そして、先程連絡が入り、無事撃退及び確保したことに成功したの事です。」
男がそう言ったのを聞いていた人物は、スーっと煙を吐き出して、
「……そうか。」と、言った。
用件が終わり、男は「それでは私は業務に戻ります。…………司令長。」
そう言って男はドアを開いて、中へと入っていった。
「さて……」
タバコを吸っていたその人物ーーーーーー。
国家防衛軍最高責任者及び最高司令長、新崎千尋は夜風に靡くその長い黒髪を押さえながら、上空を見上げたーーーーーー。