表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編集】あることを、あるがままに。

冬のお姫様とおいしいパンの物語。

作者: パン大好き

 昔々、ある所にお姫様がいました。

 それはそれは、とても綺麗なお姫様でした。

 

 お姫様は真っ白なドレスを着て、真っ白な塔に住んでいました。

 お姫様がいる真っ白な塔の先っぽからは、いつも、白くて、キラキラしたものがモクモク、フワフワと出ています。


  あれは、何だと思いますか?

  それは、綺麗な綺麗な雪でした。


 真っ白なお姫様は、小さなお手々を合わせて、お願い事をしています。

 お姫様のお願い事は、真っ白な雪に変わって、お空に飛んで行くのです。


  それは、とっても綺麗な結晶でした。

  けれども、とっても冷たい結晶でした。


 お姫様はいつも独りぼっち。

 きれいな服を着ても、きれい塔に住んでいても、とても寂しかったのです。


 お姉さま達は、なぜ来てくれないのかしら?

 私の事を忘れてしまったのかしら?


 お姫様はあまりにも寂しいので、とうとうほっぺをぷぅと膨らませました。


 すると、どうでしょう。


 お姫様は、ふわりと風船のように飛びあがりした。

 真っ白な塔を飛び出して、ふわふわとお空を上っていきます。

 空を飛ぶお姫様に、小鳥さんがびっくりして、お目目をクルクル回しています。


 お姫様は、ほっぺを膨らませたまま、ゆったりとお空を散歩しました。

 すると空の向こうから、大きな雲が、やって来ました。


「こんにちは、冬のお姫様」


 もくもく雲は、大きな声でご挨拶しました。

 真っ白なお姫様は、それはもう、びっくりしました。


  雲さんのお声が、とっても大きかったから?

  雲さんに、冬のお姫様って、お名前を呼ばれたから?


 いいえ、どちらも違います。


 何といっても、とっても香ばしい、とってもいい匂いがしたからです。


 そう、もくもく雲さんは、大きなパンだったのです。


 冬のお姫様は、雲さんのパンを見て、お腹がぐうと鳴りました。

 真っ白だったお姫様のほっぺは、真っ赤になりました。


 どうぞどうぞ。雲さんが言いました。


 ぱくぱく。雲さんのパンをかじります。

 冬のお姫様のほっぺは、みるみる膨らみます。

 雲さんをもぐもぐしていると、とっても元気になりました。


 お姫様は、お腹一杯ぽんぽこりんになりました。

 何だかいい気持ちなので、ふわふわしたパンのベットに寝そべりました。


 すると、どこからか、女の子のおしゃべりが聞こえてきます。


 お姫様が、耳を澄ませると--


 もくもく雲には、春、夏、秋の3人のお姉さんが遊んでいるではありませんか。


 冬のお姫様は言いました。


  私を一人ぼっちにして、ずっとここで遊んでいたの?

  ごめんね、冬ちゃん。でもね、ここのパンは、とってもとってもおいしいんですもの。


 4人になったお姫様は、一緒にパンを食べました。

 4人で食べたパンは、一人で食べた時よりも、びっくりするくらいにおいしかったのです。

 けれども、冬のお姫様は言いました。


  みんなが、とっても心配しているので、そろそろ塔に帰りましょう。


 3人のお姉さんたちは、反対しました。


  もくもく雲さんのパンは、おいしいんですもの。帰りたくありませんわ。


 真っ白なお姫様は、桃色と、青色と、金色のお姫様に言いました。


  それなら、みんなでパンを作りましょう。みんなで食べると、こんなにおいしいですもの。みんなで作れば、きっと、もっとおいしいパンが出来るはずよ。


 4人のお姫様は、立ち上がりました。

 もくもく雲さんにさよならを言うと、一緒に、ゆっくりと、真っ白な塔に降りました。


 そしてみんなで、小麦粉を捏ねて、パンを作りはじめました。


 春のお姫様は、柔らかな息吹を。

   あったかパン生地はふっくら膨らみます。


 夏のお姫様は、熱い口笛を。

   膨らんだパン生地をしっかり焼き上げます。 


 秋のお姫様は、豊かな風を。

   焼き上がったパンを香ばしい香りが包みます。


 そして、冬のお姫様は、涼しさのヴェールを。

   熱さを抑えて、パンをしっとりと見守ります。


 出来上がったパンは、それはそれは、とってもおいしいパンでした。


 もう、冬のお姫様は寂しくなんてありませんでした。

 だって、おいしいパンと、お姉さんたちがいるのですから。


 お願いごとのために合わせていたお手々で、そっと春のお姫様に触れました。


 すると、塔の先っぽから、暖かな風が吹き出しました。

 ポカポカがやって来て、野原や町に積もっていた雪は溶けてしまいました。

 冷たくて真っ白な結晶は、キラキラとしたお水になりました。


 春がやって来ました。


 さらさらと流れる小川のはたには、小さくて、かわいい、真っ白なお花が咲きました。


 

 お読みいただきありがとうございます。

 散髪の待ち時間があまりにも長かったのを利用(理容)して、打ち直しました。子供への読み聞かせの場合は、言葉の意味を想像する楽しさもあるので、すべて平仮名表記としていました。しかし、自身でも読みづらいので「大人版」を投稿しました。


 木枯らしは空へと帰り、町には春がやって来ました。今年度もよろしくお願いいたします。


 パン大好き


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ