第九十六話 和
「第一回!」
「水泳部主催!」
「お菓子作り対決―――っ!!」
「「「イエ――――――イ!!!!」」」
……なんだこの異常なテンション……。
「第一回お菓子作り対決。司会は水泳部一年、松田がお送りします!」
「解説は同じく水泳部一年ー、石井ですー」
「この勝負は次期マネージャー候補、古木さんと水泳部の誇る二次元オタクの代表格、杉田との戦いとなっています。この二人は、保育園の頃からの知り合いだということで、積もるものもあるのでしょう。特に古木さんの方は気合いが十分です!」
「ここ数日見ているだけでもー、古木さんの執着心はー、よくわかりますからねー。いつも一緒にいるー杉田への嫉妬心がーこの勝負へと駆り立てたんじゃないでしょうかー」
お前たちは一体何の話をしてるんだ?義人のお菓子作りの才能に嫉妬した保護者が、義人を越えるために勝負を仕掛けたんだろ?
「そして全く理解していない当事者、試食者にして採点者、みっちゃんだーーっ!!!正直ウゼーーーッ!!!」
「「「ウゼーーーッ」」」
集団での言葉の暴力!?ひどい!!
「さあ、試合開始ーーーっ!!!」
「「「イエ――――イッ!!!」」」
……とはいえ、お菓子はもう作って持ってきてあるんだけどね。
「まずは先攻、古木さんのお菓子だーーーっ!!!」
「「「おおおーーーーーっ!!!」」」
いちいち盛り上げんでいいから。
「私のお菓子、それは……わらびもちです!!」
「ほう」
「おおっと古木選手、和菓子で攻めてきたぞーーっ!?解説の石井さん!この作戦はいかがですか!?」
「三井はあんな風ですけど甘党ですからねー。作戦はいい感じじゃないでしょうかー」
「そうですか!さあ早速試食に入ったみっちゃんの反応は!?」
「……旨い」
「やった!」
「反応は上々だ―――っ!!!」
「では古木選手!調理法の説明をどうぞ!」
「片栗粉を水で溶き、レンジの弱で一分ずつ、取り出してかき混ぜる作業を繰り返します!それだけでわらびもちは完成します。きなこは大豆をすり鉢ですって砂糖を混ぜたもの、あんこは小豆から煮詰めて作ったものです!」
「意外とお手軽メニューだーっ!!!きな粉もあんこも市販のものを使えばさらにお手軽!皆さんもぜひ作ってみよう!」
……うるせえ。静かに食わせてくれ。
「しかしこのわらびもちは旨いな」
「ありがとうございます!」
「きな粉ともあんことも相性が抜群だ。よくやったな」
「ふふふ、先輩……うれしいこと言ってくれるじゃないですか!」
「みっちゃんの古木さんへの好感度が上昇ーーーっ!!!攻略の日は近いのかーーーっ!?」
……攻略ってなんやねん。