第九十話 お菓子
今日も厳しい練習を耐え、部室でみんなでエロ大魔王でもするかと話し合っていると、義人が嬉しい報告をしてきた。
「みんな、お菓子作ってきてやったぞ」
「義人、気が利いてるな」
「スギ、サンキュー。で、何を作ってきたんだ?」
「ケーキだ」
「へー。どうやって作るんだ?」
「旦那、知りたいのか?」
「まあ興味本位程度にはな。知らんよりかは知っておいた方がいいだろ」
「なら簡単なレシピを教えてやろう」
「その前に食わせてくれ」
「了解」
もぐもぐ。やはり義人は料理が上手い。教えてもらった方がいいだろう。
「……で、作り方だが」
「ふむふむ」
「オーブンで作るのが一般的だが、簡単な作り方……しかも一人暮らしでもできるやり方を教えよう」
「それは便利だな。ぜひ教えてくれ」
「まず最初に」
「メモメモっと」
「スポンジケーキを買ってくる」
「ちょっとまてや」
「そして市販の生クリームを塗りたくり、果物を添える」
「だれがデコレーションの方法を聞いとるか」
「でも旦那、簡単だろ?」
「一人暮らしでそんな量買ってたら破産するわ」
「でも意外と安くつくぞ?」
「俺が知りたいのはスポンジケーキとかの作り方だ。しかも一人暮らしで作れる、楽なの」
「贅沢な話だなあ」
「スポンジケーキをそのまま買ってくるより贅沢ではないだろう」
「一人暮らしでとなると、オーブンがないかもしれないな」
「そうだな」
「そこで、炊飯器を使った作り方を教えよう」
「俺が知りたいのはケーキとかのお菓子の作り方だと言わなかったか?」
「だから炊飯器で作るケーキの作り方だ」
「それは知らんかった。すまん」
「ホットケーキミックス200グラム、砂糖60グラム、牛乳200グラム、卵イッコ、マゼル」
「なぜ急に片言!?」
「マゼル」
「わかったよ」
「マゼル」
「わかったって」
「マゼルン」
「風来のシレン!?」
「炊飯器ニ溶カシタバター塗ル」
「なあ!だからその片言は何かの嫌がらせなのか!?」
「余ったバターは生地に混ぜる」
「戻った!」
「あとは炊飯器に入れて早炊きを二回すればオッケーだ」
「簡単だな」
「簡単だろ」
「でも早炊き二回だと時間かかるな」
「なら出来合いのケーキ買え」
ごもっともだ。金か時間のどっちを取るかだよな。もちろん俺は金を取るが。
「この金の亡者め」
「経済的と言ってくれ」
「けち」
黙らっしゃい。




