第八十九話 展開
「ラブコメ的な展開が欲しい」
「……気でも狂ったか義人……。いやすまん、いつものことだったな、お前が狂ってるのは」
「ひどっ!罰として俺の相談に乗れ!っていうか乗ってくださいお願いします!」
「それは罰とは言わないだろう」
「なんだかんだ言ってもー、三井は相談に乗るんだねー」
「暇だからな」
「旦那はツンデレだなー。照れなくてもいいんだぜ」
「鉈持ってこい」
「ヤンデレ化!?」
「冗談だ」
「……だよな?」
「カッター持ってこい」
「用途が激しく気になるんですけど!?」
「馬鹿だなあ。カッターは物を切るためにあるんだ」
「今重要なのは、その物を切る道具で何を切るかだ!切るのは無機物だけにしてくださいお願いだから!」
「だから冗談だ」
「……本当だな?」
「二割は」
「八割本気って冗談で済むレベルじゃねえ!!」
「……で相談ってなんだ?あいにく俺は、ラブコメの主人公になる方法は知らんぞ」
「またまたあ。旦那、女子の中では結構人気あるらしいぞ」
「この一ヶ月ほど、家族以外の女子と話した記憶がない」
「高城さん(水泳部)とは?」
「事務連絡はするし、されたりもするな」
「ええー?三井は駅周辺でかわいい女の子と一緒にいたじゃんー」
「てめえ旦那!裏切りやがったな死にさらせ!!」
「落ち着け義人。ナチュラルに急所(目とか水月とか股間とか)を攻撃してくるな。保護者だよ保護者」
「保護者ちゃんとデートだと!?死ね!」
「だから落ち着け。デートなんぞしとらん。清水も一緒だったし」
「……接点が見つからないんだが」
「話せば長くなるが……<かくかくしかじか>なんだ」
「わかんないよー。<かくかくしかじか>って言われてもー」
「なるほど。清水が保護者ちゃんをナンパをした原因だったのか。俺の勘違いだったみたいだな」
「杉田に伝わってるしー。何これー?以心伝心ー?」
「旦那とは付き合いが長いからな。理解し合おうと思えばなんとかなる」
「何その無駄なスキルー」
「つまり義人はさっきまで、俺の言い分を聞こうとすらしなかったわけだな。どうしてくれようか」
「まあいいじゃん。悪気があったわけじゃないんだし」
「自分で言うな。腹の立つやつだ。知ってたけど」
「それで旦那、現実でハーレム展開になるにはどうすればいいと思う?」
「ラブコメ的展開から露骨に発展したな。しかも下方修正だ」
「俺は正直なんだ」
「正直者は馬鹿を見るぞ……義人は馬鹿だから問題ないか」
「で、方法はないか?」
「真面目にしてろ。大体ハーレム展開ってなんだよ。誰か好きな人がいるわけじゃないのか?」
「いないな」
「最低だな。ならどうしてそんなこと言いだしたんだ?」
「男の永遠のテーマじゃないか。いかにしてハーレムを作るか」
「世間一般90%のもてない男性に謝れ」
「まあ実はちょっとしたゲームにはまっちゃって」
「……ゲーム名は聞かないでおこう」
アホすぎる。