第八十三話 クッキング
「ちゃらちゃっちゃらちゃっちゃらちゃー」
「石井、杉田の三分間クッキングが始まるよ!」
「……いちいちそんなテンションで入らなくていいから」
明日から二日間、両親が法事でいなくなるため、俺は一人自炊しなくてはならない。そのため、料理が得意な義人に相談したのだが……人選間違えたかな。
「今日のポイントは手間暇かけて、じっくり煮込んで作るおいしいビーフシチューです」
「三分で終わらねえ!」
「食べるのが三分間なんだよー」
「一人なのにみじめだよ!焦る意味がわからない!じっくり食わせてくれ!」
まあ一人時間をかけて食べるのもみじめだと思うけど。
「ならおいしいカップ麺の作り方を……」
「相談する意味がないだろ、それじゃ!」
「インスタントヌードルのー」
「インスタントじゃないので頼む!」
「冷凍食品のあんかけラーメンについて……」
「言い方が悪かった。ご飯のお供になるおかずと、野菜のおいしくて楽な調理法を教えてくれ」
「初めからそう言えよ」
「そうだよー」
「まさか俺だってラーメンにそこまで固執されるとは思わなかったよ」
ラーメンにトラウマでもあるのですか君たちは。
「ならきんぴらでいいか」
「きんぴらごぼうか。いいな」
「きんぴらごぼうじゃない。きんぴらだ」
「…………?」
「つまり味付けはきんぴらと同じで醤油、みりん、砂糖だが、人参以外にも野菜を入れるんだ」
「おいしいのか?」
「野菜による」
「例えば?」
「玉ねぎ、大根、じゃがいも、れんこんなんかを細長く切って、さっき言った味付けで炒めるとおいしい」
「緑の野菜の料理ではなんかないか?」
健康のためには栄養のバランスが大切だしな。油がないのだといいんだが。
「ほうれん草を切って、水を張った耐熱容器に入れてレンジで五分熱したあと、冷ましておけ。冷めたら水を捨てて、代わりに麺つゆを入れればお浸しになる」
「……お前はほんとすごいな。ありがとう」
「礼には及ばん。ただ、教えたんだからひとつ頼みたいことがある」
「なんだ?」
「ちょっと待っててくれ。」
気分がいいからたいていのことは許そう。……お?俺のバッグを持ってきたな。ノートを写させてほしいとかか?そんなこと頼まなくてもやらせてやるのに。律儀なやつらめ。
「旦那の水着に、油性マジックで<らき☆すた>の絵書いちゃった。てへ。許して?」
「許せるかあああぁぁぁ!!!!」