第八十二話 ペナルティ
「ねーねー、エロ大魔王にペナルティ付けようよー」
「ペナルティ?」
水泳部の部室でエロ大魔王に興じていた俺たちは、石井の言葉に耳を傾けた。
「ペナルティならあるだろ?エロ大魔王はいちいち行動がエロいとか言われてるわけだし」
「次の回のトランプを切ったり配ったりもしてるよな」
「そういうのじゃなくてー、もっと楽しいペナルティだよー」
「楽しいの?」
石井の言う<楽しい>が、俺にとって楽しかったという経験がない気がする。ライトセーバーバトルとかその他もろもろ。
「そうそう。大魔王になった人にはポイントが一点加算されてー、そのポイントを減らすためには何かしないといけないみたいなー」
「部室の掃除とかか?」
この水泳部には整理整頓という概念が欠如しているらしく、俺以外に掃除する人がいない。そのくせすぐに汚すため、トランプをやるスペースを除いては、ものが散乱している。今もすし詰めになってやっているくらいだ。だから、ペナルティが掃除なら、一石二鳥で素晴らしい。何ていいアイディアなんだ。見なおしたぞ石井。
「全然楽しくないじゃん―」
訂正。石井は楽しむこと以外何も考えてませんでした。
「もっとこうー、みんなが笑えるようなやつだよー」
「具体例を出してくれ」
そうだそうだ。松ちゃんの言うとおり、具体案を出せ。
「うーんとー」
さあ言ってみろ。
「等身大フィギュアと一緒に登校、とかー?」
ペナルティ重ええぇぇぇぇ!!!!
「笑えるでしょー」
「笑えねえよ!何それ!?死刑宣告!?嫌がらせの域を超えてるだろ!?」
「これで一ポイント消費ー」
「低いよ!?ポイントの燃費悪すぎ!!いつものペースでエロ大魔王し続けてたら、一体何回死に等しいことをやることになるんだよ!!」
「ちなみにポイント名は<萌えポイント>だよー」
「萌えねえよ!誰が萌えるんだよ!痛い人に見られて焼身自殺はしたくなるかもしれんけど!!」
「……ぽっ」
「通りすがりで立ち聞きしてた高城さん!!ほほ染めるな!!いったい誰がそれしているところ想像した!?」
「……じー」
「俺の方を見るな!そして変な想像するな!やめて!俺を妄想で汚さないで!!」
「もしくはー、授業中フィギュアを机の上に出しっぱなしにしておく、とかー?」
「フィギュアから離れろ!」
「ワイシャツの下にアニメの絵のTシャツを着ていくとかー」
「透けるから!見えちゃうから!!」
「……女子の制服で登校」
「田村!?さらっと恐ろしい提案はしないでくれるかな!?」
「……ドキドキ」
「高城さん!?やめて!俺を着せ替え人形にしないで!!」
「いい。旦那だけ」
「てめえ義人裏切りやがったな!?ってか趣旨変わってるし誰か止めてえーーーっ!!」
俺の猛抗議の結果、とりあえずこれからも現状維持で、ペナルティなしになった。……高城さんの目が途中(女装計画あたり)からマジになったのが怖かった……。夜道には気を付けよう……。