第七十六話 混沌
「あー、妹がほしいなー」
「貴様は何をいっとるんだ、石井」
また石井が何かわけのわからんことを言い出した。
「もちろんー、本当の妹じゃなくてー、義妹だよー」
「そんなとこ誰も反応してないから」
「まあ、それには同意だな」
「同意するのか!?」
さすが義人。石井とは意見が合うようだ。変人二次元オタク同士で。
「そもそも義妹ってなんだよ。お前たちは親に再婚でもしてほしいのか」
「馬鹿だな、旦那。そうじゃないんだよ」
何が馬鹿だ。お前のような俺と違う世界、通称二次元に生きる奇人に馬鹿呼ばわりされるいわれはない。
「そうだよー、三井にはエロチシズムというものがわかってないねー」
そんなもんわかりたくもないわい。
「いいか、旦那。ここでは設定が大事なのだが、そんな悲しい展開から発達する必要はない」
「悲劇はのちにハッピーエンドにつながるかもだけどー、現実ではねー」
「現実で義妹なんて考えてる時点で終わってると思うのだが、どうだ」
「ところでダ・カーポ系統は義妹がいいよねー」
「話を変えるな。……いや、変わってないのか?」
「ツンデレは素晴らしい。義妹という要素が加わることで良さが二倍、三倍になる」
「そんな語ってもらっても反応に困るから自重してくれ」
「ドジっ子もポイント高いよねー」
「無論だ」
「ドジっ子って、ただ要領が悪いだけじゃないか?何が点数の加点要因になるんだよ」
「それを話すには少し時間がかかる」
「どれくらいだ?別に聞きたくないけど」
「たったの二時間だ。ではまずドジっ子の萌える理由だが……」
「聞きたくないって言ったのに!?しかも二時間って全然少しじゃねえ!!」
「ふむふむ」
「なぜかクラスの男子が集合してる!?お前ら興味あるのかよ!?」
「ありまくりだ」
「自信をもって言うんじゃねえ!恥ずかしいと思わんのか!?」
「思わないな。俺は漢だからな」
「思えよ!」
「お、男らしいぜ清水……」
「全く男らしくないから!駄目人間に近いから!」
「それでも俺は聞く方を選ぶぜ!」
「いい加減にしとけ!」
「……つまり失敗したときにどうすればいいかわからなくなる、その様子が萌えへとつながるのです」
「説明まだ続いていたのかよ!?」
「なるほど」
「ほとんどの男子!説明聞くのに没頭してるんじゃねえ!」
「さあ皆も一緒に!萌ゑ!萌ゑーーっ!!」
「「「萌ゑ!萌ゑーーっ!!」」」
「何この宗教団体!?」
今日も変人達は元気なのだった。