第六十九話 恵みの雨
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「梅雨だな」
「そうだな、旦那」
雨なので徒歩で登校中の俺たちは、北高の敷地内を歩いていた。……門から昇降口までが遠すぎる……。
「雨がよく降るな」
「梅雨だからな」
「雨はうっとうしいが、こういうのも農業には必要なんだろ?」
義人の家は結構な地主で、おじいさんが農業をしている。その所有している土地の資産額は億に上るらしく、その手の業者からは、土地を売らないかとの持ちかけが後を絶たないそうだ。そりゃ、農地にしたまま数年に一度しか使わない土地があれば、売ってほしくもなるだろう。土地は有効に活用しましょう。まあ、先祖代代伝わったものだから売るわけにもいかないだろうが。その農地で、米や野菜などを作っているのだが、義人は毎年その手伝いをしている。させられている。そんなわけで義人は農業にも詳しいのである。
「そうだな、農作物に限らず、草木や生き物にもこの雨は重要だ」
「そうか、成長の大事な要因なんだな。恵みの雨、ってやつか」
「うん。自然の法則に従って、すべてのものは生きているわけだからな」
「その点、この北高は緑も多いし、生き物は育ちやすい環境にあるんだな」
「その通りだ。まあ生き物なんてのは強いから、どんな環境でも結構生き延びるけどな」
「なるほど。もう一つ質問いいか?」
「なんだ、旦那?」
「……その雨と環境で育ったと思われる、あの芝生の上のいかにも怪しげなキノコはなんだ?」
「俺に聞くな」
即答かよ。
「……なんだよあれ……?どこから湧いて出てきやがった?」
「北高は自然がいっぱいだな」
「あの「僕は毒をもっているよ!」って自己アピールしている色のキノコを自然と呼ぶのには、かなりの抵抗があるのだが」
キノコならキノコらしく茶色とか白色とかになれよ。なんで黒ずんだ紫色してるんだよ。
「旦那、食ってみて」
「それはあれか。新手のいじめか」
「そんなことないよ。意外とおいしいかもしれないじゃん」
「意外と言ってる時点で、お前もまずそうだと思ってるのが丸わかりなんだが」
「期末テスト休めるかもよ?」
「長期入院覚悟!?」
「楽になれるかもよ?」
「死亡覚悟!?」
「気持ちよくなれるかもよ?」
「幻覚作用覚悟!?」
「やったー、志望高校に受かったぞ!これからは遊ぼう!」
「高校合格後!?……ってそれ違う!!」
教室に入って、始業を待ちながらも続きをだべる。
「まあ、あんな不気味なもの無理だよな」
「そもそもなんてキノコだあれ?」
「芝生掃除のやつに言って、採っておいてもらおう。あれは景観的にもカオスだ」
「処理はどうするんだ?」
「肥料とか」
「食べようぜ、誰か」
「そんなの無謀だろ。あんな怪しいの食うのは、どうかしてるって」
そんなことを言っていると、教師が来た。なぜか健三さんではなく、副担任の教師。
「センセー、健三さんは?」
「……山本先生は食中毒で昨日病院に運ばれました」
……まさか……。……違うよな……?
できれば感想ください。作者は感想に飢えています。