第六話 読書感想文
「私、読書感想文っていらないと思うんですよね」
古典の授業中、健三さん(担任)は唐突にこう言いだした。
「本なんて所詮娯楽なんですから。でも藤田先生がやると言ってるので提出はしてください」
藤田先生とはうちのクラスの現代文の先生である。
「私が現代文を受け持っているクラスは適当に」
適当というとどれくらいなのだろうか。
「一行でも書いてあればいいといってあるんですが」
おい。
「むしろ短いほうが楽でいいんですけどね」
問題ありすぎだろ。
「かつて凄い量を書いてきた生徒がいるんですがね」
やる気があっていいと思うが。
「そんな人でも点数は同じです」
この人に生徒を教育する気はあるのだろうか。
「むしろ点数下げたかったんですけどね。面倒でしたし」
生徒たちに本音を言うなよ。
「そんなわけで私の現代文のクラスは出すか出さないかの二者択一です」
100点か0点の二択か。極端な。
「でも藤田先生はしっかり読んで採点するので頑張ってください」
それだけ言っておいて俺たちにはしっかり書かせるのか。
「センセー、なら藤田先生に言って感想文やめにしてくださいよ」
おお、誰かが意見した。がんばれ。
「いやですよ。そんな面倒なこと」
この人に生徒への愛はあるのか。
「そこを何とか……」
「授業を終わります」
無視した。
結局俺たちのクラスは原稿用紙五枚分しっかり書かされた。……理不尽だ。