第六十七話 応援
「無難だな」
「だがそれが旦那らしい」
「普通だ」
「……平凡な成績」
「県にいけなかったのは残念だな。だが三井らしいタイムじゃないか」
「三井らしいよー、この無難さがー」
「……お前ら、人を貶めてそんなに楽しいか」
俺が泳ぎ終わった後、みんなからかけられたのはこのような言葉だった。タイム自体は自己ベストを少し上回るくらいだったのだが、それだからといって「平凡」だの「無難」だの言わなくてもいいじゃないか。まあ、出場する前に俺が「全力を出してみんなをあっと言わせてやるか」などと言ったのが原因の一つでもあるのだが。まるで俺の代名詞が「普通」であるみたいに聞こえるぞ。……まあ他の北高生に比べれば<普通>で<平凡>ではあるか。
「後残るはフリーリレーか。これが終われば帰れるのか?」
「いや、小倉さんの話があるだろ」
「……となると帰りは相当遅くなるな」
「なんてったって<審判長>だからな」
開会式での審判長注意で、小倉さんが出てきたときはかなり驚いた。あの顔でそんな偉い地位についていたとは……。小倉さんも北高の関係者であることをしみじみと感じた。やっぱり無駄にハイスペックな人多すぎだろ。
「……お、フリーリレーの最終組だ。四人ともいるな」
「がんばれー!浜ちゃーん!」
「マサ!気合入れろ!」
「部長も副部長も頑張ってくださーい!」
「ジャスティス!」
なんか変な掛け声入った!?
「なんだその応援!?」
「え?よくない、旦那?」
「義人かよ!ジャスティスって正義じゃねーか!競泳と関係ねえ!!」
「ならー、パラメラー!!」
「……なに、それ?」
「特に意味はないよー」
「ただの奇声かよ!!」
「……缶コーヒー、プス」
「田村まで無理にボケなくていいから!!」
「ありがとう!俺たち、頑張る!!」
「えぇ!?今のどの言葉で盛り上がったの!?」
謎だ。
「Take your marks...」
「ああ!気持ち悪いところで始まった!なんか嫌だ!」
「旦那、慣れろ」
「無理だ!!」
フリーリレーも敵を寄せ付けず二位だった。一位の豊玉高校とはかなり後れを取り、三位の豊岡高校を引き離したので、寄せ付けていないのである。団体成績も男子総合二位(一位の豊玉高校とは三倍の点差)、女子総合五位と好成績だった。……女子は二人しかいないんですけど。恐るべし高城さんと福盛先輩。