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第五十九話 模試

「この前の模試の結果を配ります。取りに来てください」

 帰りのHRホームルームで健三さんが何か大量の紙を持ってきたと思ったら、この前の模試の結果だった。この模試は主要三教科(国語、数学、英語)のみのテストであり、化学という文系志望の人間がやるべきでない教科が抜けているため、ひそかに自信のあるテストだ。

「次、早く取りに来ないと、全面コピーして全校生徒に配りますよ」

 さらっと恐ろしいことを言わないでください。

「次は……三井ですか。ほう、なかなかですね」

 結果、学年五十七位(三百二十人中)。模試とはいえ、全国や県の順位はよくわからないので、学年の順位がこれだけ良ければ十分だろう。むしろ完璧である。

「旦那はいいな……主要三教科に強くて」

「義人、横から人のを勝手に覗くな。お前はどうだったんだ?」

「聞くな」

「ふーん、二百十八位かー。ちょっと低めだねー」

「イッシー!横から人のを勝手に覗くな!」

「お前にその言葉を言う資格はないと思うぞ。二十秒前の自分の行動を思い返せ」

「イッシーは何位だ?」

「無視か」

「二十位だよー」

「ちっ」

「旦那、自分よりだいぶいいからって舌打ちするな」

「よかったじゃないか、すごいな、石井」

「無視か」

「そうでもないよー。他のクラスには全国一位がいるしー」

「ふーん、そうなのか」

 ……ん?

「ちょっと待て。今のお前の発言にはいくつか疑問点がある」

「どうぞー」

「なんで他のクラスの結果をお前がもう知ってる?」

 ハッカーでもしてるのかお前は。

「他のクラスはー、二日前に結果がもう配られてるからー」

「……なんでうちのクラスはこんなに配られるのが遅いんだ?」

「健三さんだからだよー」

「……なるほど」

「いやそこで納得しちゃ駄目だろ、旦那」

 でもまあ健三さんだし。何があってもおかしくない。それが健三さんである。

「それで、お前は今全国一位(・・・・)と言ったな?学年一位の間違いじゃないのか?」

「三井の耳は正しいよー。僕は今ー、全国一位と言ったからねー」

「……まじか」

「まじだよー」

「……なんだ夢か」

「旦那、現実逃避すんな」

「でもだって全国一位だぞ!?そんなの実際に存在するのか!?架空の人物じゃないのか!?」

「いやそりゃあ全国のどこかには存在するだろう。それがうちの学校だったってだけだ」

「……義人、お前冷静だな」

「俺その情報二日前には知ってたし」

「教えろよ!その時点で教えろよ!」

「そんなこと言ったって信じなかっただろう?」

「だろうな」

「即答するなよ、旦那。悲しくなる」

 義人の話の半分はデマだからな。今までの経験がものをいう。

「で、どうするー?三井も奥村に会いに行くー?」

「奥村って誰だ?」

「だから全国一位の奥村だよー」

「……行く」

 本当なのか確かめないといかん。……まだ事実だと認めたくない自分がいるし。



 結論から言おう。……事実でした。

「なんで全国一位のテスト結果を机の中で丸めて放置してあるんだよ……!」

「旦那、天才とはそういうものなんだよ」

「そういうものなんだよー」

「……ほんとなんなんだ……?この学校のハイスペックさは……?」

「旦那もその学校の一員だからな?忘れるなよ?」

 ……泣くな、俺。



全国一位なんて普通いねーだろ!というツッコミを入れたい方もいるかもしれませんが、うちの学校(しかも同学年)に実際いました。この小説は事実をもとにした内容がいくつかありますが、全国一位がいたのも事実の一つです。ちなみにその人はめでたく東大現役合格。センター試験でも全国一桁の順位でした。……ちっ。お前の学校はどんな愉快な学校だという意見は受け付けておりませんので悪しからず。

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