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第五十一話 三試合目

「点が取れねえな……」

 前期クラスマッチ二日目、ソフトボールの部三試合目。俺たち一年七組は予想以上の苦戦を強いられていた。

「朝倉先輩のワンマンチームだとばかり思っていたが……守備が堅いな」

 朝倉先輩というのは、現在の野球部キャプテンにして三番バッター。走攻守三拍子そろった名選手として、高校入学時には野球留学の話もあったという強者つわものだ。野球部の柳や深谷から他に野球部の先輩はいないと聞いたので、その人だけをマークすればいいと結論付けたのだが……。

「あれは相当守備練してるわ」

 現時点で0-1。相手の一点は朝倉先輩のソロホームラン。清水の重い球をライトオーバー(朝倉先輩は左打ち)するとは、野球部のレギュラーの実力は半端じゃないようだ。こちらの攻撃は、ランナー三塁までいっても、あと一本がでない嫌な状況。相手に主導権を握られていると言わざるを得ない。

「三年はこれでクラスマッチ最後だしな。胸に期するものがあるんだろ」

 何事にも全力投球するのは、我が北高の長所でもあり短所でもある。

「……でなにか状況を打開するための具体策はあるか?」

「ねばって四球を選ぶとか……」

「時間が残り少ないからな……四球か、もしくはセンター返しを狙おう」

「次のバッターは?」

「八番兼子だ」

 先ほどは二死三塁のチャンスで俺が凡退してしまっただけに、この回の攻撃は重要だ。クラスマッチのルールでは、三回戦までは四十五分を過ぎたら即座に試合終了となる。現在、試合開始から三十分過ぎ。この回で点を取らないとかなり厳しい。

「ボールよく見て!相手も疲れてるからな!」

 兼子は結局一度もバットを振らずに四球。

「審判!代打!出番だ<しゃくれ>!!」

「しゃくれ言うな!」

 九番城田のところで代打<しゃくれ>こと佐々木。陸上部に所属しており、チーム二位の俊足(一位は野球部の柳)だ。

「「「しゃくれ!しゃくれ!しゃくれ!しゃくれ!」」」

「お前らうるせえ!」

 ……はっ!俺まで調子に乗って叫んでしまった。

「ストライク!バッターアウト!」

「やっぱり駄目か……」

「しゃくれだもんな……」

 やはりしゃくれは駄目だった。野球未経験者の中でもレギュラー落ちしたくらいだから、実力はもともと大したことないのだが。

「やはり野球部頼みだな」

 一番柳がレフト前ヒット。二番小坂(野球推薦のくせに、なぜか軽音楽部所属)が四球。一死満塁でバッター清水。

「清水君、がんばれー!」

 女子の応援が響く。よし、これなら清水はやってくれる……!

「うおりゃああぁぁぁ」

 気合い十分で打席に向かったものの、結果はショートゴロ。しかし三塁ランナーがホームに帰り、併殺崩れで同点となった。二死一三塁でバッターは四番キャッチャー深谷。時間もそろそろ終了するのでここで決めたい。同点の場合、じゃんけんで勝敗を決めることとなる。

「「「深谷!深谷!深谷!深谷!」」」

「…………」

 おお、応援に全く動じない。すさまじい集中力だ……っ!

「……清水いつか殺す……少しは力抜けや……っ!」

 ……ただの私怨でした。

 


 試合は負のオーラに包まれた深谷の、三塁線を破るツーベースで逆転。3-1となって相手の攻撃に入る前に時間切れで勝利を得た。次はいよいよ準決勝。是非とも勝ちたいものだ。


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