第四十八話 休憩
ソフトの二試合目で発覚したこと。それはエースである<生きる伝説>清水が、<女子に振られる><女子の応援がない>などで力を存分に発揮できなくなってしまうことだった。つまりは女子に関することでは打たれ弱いということだろう。回復も早いことがせめてもの救いだが。
そこで昼の休憩中。
「清水はスゲーよ。運動神経ずば抜けてるし」
「そうだよ。体力テスト学年総合三位だろ?清水にはかなわんな」
「そうか?俺ってすごいかな」
「ああ。清水は最高だよ」
俺たちは清水を褒め称えまくっていた。
清水のメンタル面を少しでもいい状態でマウンドに送るため、みなでできる限りのお世辞を言う。今のところこの作戦は好調のようで、清水はかなりリラックスしているようだ。
「ならみんな、俺のスゲーところを言ってってくれよ」
……訂正。清水はかなり調子に乗っているようだ。
「……一人ずつ言うのか……?」
おお、原君の眉がぴくぴくと動いてる。癪に障ったんだな。
「一人ずつ言ってくれ」
それに気づくそぶりすら見せない清水。お前のKYっぷりは称賛に値する。
「……では古今東西清水のすごいところー」
山手線ゲームかよ。
「運動神経のよさ」
うん、それは間違いない。
「感情を内面に隠せるところ」
教師相手限定だな。
「つまづいても何度も立ち上がるところ」
振られても何度も復活するという意味だな。
「地震が起きる前に暴れるところ」
清水はナマズか!?
「映画になるといいやつになるところ」
ジャイアン!?
「俺が入院した時にエロ本を持ってきてくれたその優しさ」
入院患者に何してんだ!?
「空気の読めなさ」
もはや長所じゃねえ!
「%&★$#*☆」
何語!?
「地震が起きる前に暴れるところ」
それ聞いたよ!マジで地震予知できるの!?ナマズ!?
「夢が<黒柳徹子に「髪型おかしいですよ」と言ってあげる>なところ」
勇者だ!そして無謀だ!
「消してやる……あの地球人のように!」
クリリンのことかーっ!!……って何が!?
「色々ドンマイ」
清水が振られたこと蒸し返すなーーっ!!
「……なるほどな。俺ってすごいよな!」
いろいろなフォローの結果、清水のメンタル面は絶好調になったようだ。これで次からの試合は全力で戦える。俺も自分の仕事をこなさないとな。
「深谷!ピッチング練習する!手伝え!!」
「いやだよ!休憩くらいさせてくれよ!痛えよ!」
「気にするな!お前はやればできる子だ!」
「やりたくねえよ!」
「お前に拒否権はない!」
「ひでえ!!」
……仕事が大変な深谷には悪いが。