第四十五話 一試合目
我が一年七組ソフトボールチームの初戦は、最上級生である三年五組だった。
二、三年になると理系と文系に分かれるので、一組から四組は理系、五組から八組は文系になるそうだ。そして男子は理系に多く、文系には少ない。つまり三年五組は男子の数が少なく、戦力が少ないということだ。おまけに石井の情報によると、三年五組はバレーに戦力が集中しているそうで、ソフトのチームは戦力外通告者で構成されているらしい。
この状況で負ける可能性は限りなく低いだろう。清水の檄にも自然と力がこもる。
「お前らぁ!初戦で負けたら洒落にならんぞ!!」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!」」」
「先輩だからって手ぇ抜くんじゃねえぞ!!」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!」」」
「これに負けたら残りの今学期の行事はテストだけだぞ!!」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!」」」
中間テスト、清水の赤点の個数は八つらしい。頑張れラグビー推薦合格者。
「追試なんかいらないだろ!クラスマッチよ終わらんでくれ!!」
こらこら。私情が入ってるぞ。原君なんて学年三百二十人中十位なんだから。ちなみに俺は九十六位。追試は化学だけだ。
「そんなわけで、全力で優勝してやるから足引っ張るなよ!!」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!」」」
……エラーしたらジュース一本奢り(チーム全員に)とか言ってたけど本気か……?本気なんだろうな……。目が血走ってたし。どこの狩猟民族だ、清水は。
「一回戦を始めます。両チーム集合」
審判を務めている二年の野球部(審判は各部活のメンバーが駆り出されている)がやる気なさそうに集合をかけた。三年五組は黒のクラスユニフォームだ。
「では一年七組<流血のピッコロたち>VS三年五組<黒のニーソックスって萌えね?>の試合を開始します」
……こんなチームに負けたら切腹ものだな。コールドでちゃっちゃと終わらせよう。
試合は予想通り俺たちの優勢(18−0。三回裏相手の攻撃)で進んでいた。相手は清水の吠えながらの気迫の投球に圧倒されたのか、今のところ完全試合に抑えられている。
「サッティー(数学の教師)きえろぉーーーっ!!!」
それは言いすぎだ。サッティーは頑張ってるよ。
「小林(化学の教師)死ねぇーーーっ!!!」
気持ちはわかる。追試やめろ。七十歳だろ。早く引退して墓場へ帰れ。
「辻さん好きだぁーーーっ!!!」
今清水は何連敗中なんだろう。俺が知っている限りでは三回ほど振られていたが。
「ゲームセット。集合」
くだらないことを考えているうちに試合が終わった。外から「ごめんなさい!」の声も聞こえる。清水個人の戦いは、試合にすらならなかったようだ。どんまい。
「「「ありがとうございました」」」
清水が泣いている。勝ったのに。相手チームにまで慰められてるな。勝ったのに。
「……試合に勝って勝負に負けたんだな……」
いや、勝負の時と場所を選べよ。