第四十四話 開幕
「えー本日は晴天となり、絶好の競技日和であります。しかしクラスマッチだからといって北高生にあるまじき行為に及ばぬよう、節度のもった試合や観戦を……」
せっかくのいい日和が校長、あんたのせいで台無しだ。節度をもって、とっとと話を終わらせてくれ。誰も聞きたいと思ってないから。
「うーん、待て待て、一人ずつだ……」
義人は立ったまま寝てやがる。無駄な能力だ。だがうらやましい。俺も寝たい。どんな夢を見ているんだか。
「はっ!大吟醸!」
……どんな夢だったんだ?
「…………」
健三さん。あんた教師だろ。校長の話くらい聞け。なに普通に読書してんだよ。
「…………」
かと思ったら本を閉じて運動し始めた。何するんだ?
「…………」
なぜにムーンウォーク!?しかも上手い!
「……このように去年の佐賀北高校は優勝したのですが、これは必然だったと言えるでしょう。佐賀北高校の生徒に負けぬよう、がんばってほしいものです」
ようやく校長の話が終わった。他に気を取られて全く内容を覚えていないが。
その他もろもろの話(ルール確認やごみをどうするかなど)も滞りなく進み、最後に生徒会長の開会のあいさつが残った。台に上る生徒会長。
「お前らーっ!クラスマッチが楽しみかーっ!?」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!!!」」」
なんだこのハイテンション!?
「準備はできてるかーっ!」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!!!」」」
確かにグラウンドに白線とかはすべて書かれているが。
「それもほとんどの準備をこなした執行部のおかげだ!わかってるかーっ!?」
「「「わかってます!!私たちはあなた様の奴隷です!!」」」
なんだこの儀式!?
「ではまず俺の足を嘗めろ!」
「「「調子に乗るな。屑が」」」
「……申し訳ございません」
なんだこれ!?しかもなんでみんな声がそろってるんだ!?打ち合わせとかしたのか!?<奴隷>とか<屑>とかの声がそろうってあり得ないだろ!?
「旦那、そこはフィーリングで」
「この学校の生徒は心まで読めるのかよ!?」
恐るべし、北高生。俺はまだこの生徒たちのハイスペックを測りきれていないようだ。
「それではここに<ドキドキ!?俺の北高ハーレム化計画>……じゃなかった」
何考えてるんだ生徒会長!?
「ここに<燃えよ北高!春の全校クラスマッチ>を開催する!!」
「「「おおおぉぉぉーーーっ!!!!!」
ついに開幕したクラスマッチ。俺も気合いが入ってきた。
「はあ、面倒くさい」
……健三さん。生徒のテンションが下がるようなことを、クラスに聞こえる距離で呟かないでくれ……。