第四十三話 練習試合
「クラスマッチを来週に控えたということで、練習試合を行う!」
俺たち一年七組ソフトボールチーム<流血のピッコロたち>(命名清水)のキャプテンである清水はそう言い放った。
「いつだ?」
「今日の昼休み」
ちなみに今は二限後の十分間の休憩中。北高は午前中は三限を行う。
「えらく急だな」
「相手は?」
「一年八組」
「強いのか?」
「それは後で自分たちで確かめろ」
それはごもっともだな。試合ってのは強さを図るためにやるようなもんだし。
「各自ウォームアップはやっておくように」
「「「了解」」」
さてどんな試合になることやら。
そして昼休み。
「これから一年七組と一年八組の練習試合を始めます。礼」
審判(他のクラスの野球部に頼んだ)の合図で試合開始。俺たちは後攻となった。先発は清水である。
「フルパワーでいくぜ!!」
「やめてくれ!」
悲痛な声がグラウンドに響いた。敵チームの悲鳴ではない。キャッチャーの深谷の叫び声だ。……清水の球、痛いもんな。ご愁傷様。
試合経過は省略するが、結果。9-0で俺たちの勝利。相手チームの野球部でも清水の球をクリーンヒットにはできず、俺たちはソフト経験のない相手ピッチャーの棒球を打ちまくるという一方的な試合展開となってしまった。相手ピッチャーは半泣き。ごめんなさい。
「相手が弱すぎていい試合にならなかったが仕方がない!批評を行う!」
あれだけ打っておいてそこまで言うか、清水よ。相手可哀想すぎるだろ。
「まず一番、柳!一番なのにホームラン打つバッティングしてんじゃねえ!」
「はい、すいません!」
「そんなんじゃこのチームは甲子園に行けねーぞ!」
いや、行こうとしてないから。
「以後、気をつけます!」
「次、二番小坂!苗字に<小>が入ってるのになんで180センチもあるんだ!」
試合と関係ねえ!しかもいまさらかよ!
「以後、気をつけます!」
どうやって!?
「次、三番俺!二本のホームランは立派です。よくできました」
自分には採点あめえ!
「次、四番深谷!俺の球受ける時いちいち顔をしかめるな!」
「無理だ!」
……だよな。
「次、五番…………」
「次、七番三井!打て!」
俺の今日の打席は送りバントと四球。打っていないのは事実だ。
「以後、気をつけます」
「次、八番…………」
「批評は以上だ!クラスマッチ優勝するぞ!」
「「「おおーっ!」」」
「声が小せえ!優勝するぞ!!」
「「「おおおーーっ!!!」」」
「うるせえ!!」
……こんなんで大丈夫なのだろうか……。