第四十二話 一週間
テスト一日目 現代文 数学I 家庭科
「旦那、どうだった?」
「比較的楽な教科だったな」
「えー、現代文は結構難しかったよー」
「確かにそうだな」
「……お前ら、あの問題は問題集に出てたやつだぞ……」
「不意打ちだよねー」
「ああ、卑怯だ」
「……問題集から出して卑怯なら何が正々堂々なんだよ……」
テスト二日目 英語R 情報 古典
「イッシー、あの情報のテストは生徒を馬鹿にしてるよな」
「そうだねー、あんな簡単なのじゃテストの意味ないしー」
「もっと難しくすべきだよな、生徒を見くびってる」
「そうだよねー、もっとプログラミングとかー、やってて面白いやつにすればいいのにー」
「……お前らネット廃人と一般人を一緒にするな」
十分難しかったわい。
「旦那は勉強不足だな」
「そうだよー、日頃からもっと勉強してないからだよー」
「お前らは勉強の内容が偏りすぎだろ……」
テスト三日目 日本史/地理 英語G 化学
「今日はテストが二科目しかなかったのに、ずいぶんと長く感じたな!」
「旦那、現実逃避はやめろ。無駄な抵抗だ」
「そうだよー、どうせ追試はあるんだしー」
「ぐはっ」
「旦那が吐血!?」
「三井もどんどん変になっていくねー」
お前が言うな。
「化学なんて将来使わないのにどうして習わんといかんのだ!」
「……旦那、子供みたいだぞ」
「ちくしょー!今日は全力で泳ぐぞ!」
「明日もテストはあるのにー?」
「それでもだ!頭の中が白くなるまで泳ぐぞ!」
「……旦那が自暴自棄に……」
テスト最終日 漢文 数学A 英語OC
「旦那、どうだった?」
「……全身がだるい……」
「それはあれだけ泳げばねー」
「で、テストのほうは?」
「OCは駄目だった……が他のはそこそこ良かったな」
「よかったねー」
「旦那、これで心おきなく小倉さんのメニューに打ち込めるな」
「……………」
「一週間近く指導してないからー、小倉さんもたまってるだろうねー」
「さあ、行こうか旦那」
「……待て、俺は昨日の練習でかなりばてているんだが……」
「それは小倉さんには関係ないだろうねー」
「どんなメニューになるか楽しみだ。涙が出るほどに」
「…………」
その日、小倉さんは喜々とした表情で俺たちに五キロ泳がせたのだった。
「先生!三井が沈んでます!」
「引き上げとけ」
「大丈夫かみっちゃんーっ!」
……幸い大事には至らなかった。