第三十一話 明け
ゴールデンウィーク明けの俺のクラスは緊張感に包まれていた。実力テストが行われるため朝早くから登校して、教室で勉強している生徒が多いためだ。これから朝のホームルームが始まろうというのに手を休める生徒はいない。しきりに宿題のチェックや単語の確認をしている。教室の静寂を破るように、扉が開いた。
「うちゅ〜うせんかん、や〜○〜と〜」
……空気を読んでください、健三さん。
「最後の悪あがきをしていますね、ご苦労なことです」
担任だったらその生徒の意をくんでくれ。なんで<宇宙戦艦ヤマ○>を歌って登場するんだ。久しぶりに聞いた担任の第一声が「宇宙戦艦○マト」って意味わからないにもほどがある。
「あなたがたはこの休みで十代の青春を満喫したことでしょう」
俺は泳いでばっかりだったが。
「……ちっ」
今舌打ちしたよこの教師!
「私は家族サービスに努めていたというのにいい気なものです」
そうなのか。たしか小学生の娘さんが一人いたはず(石井情報)だしな。
「家族で健康ランドに行きましたよ」
もろ自分の趣味じゃん!
「娘も満足してましたよ」
渋いな、健三さんの娘!
「風呂に浸かった後はあれも飲みましたしね」
あれか、コーヒー牛乳か。
「リポビ○ンD」
風呂の後に!?
「娘はオロナミ○C飲んでましたけどね」
明らかにこの人の変な血をひいてる!?
「そんなこんなで大変な休日でしたよ」
むしろ充実した休みだろ!世間一般のお父さん方に謝れ!
「もう時間ですね、筆記用具以外は鞄にしまってください」
しまった!健三さんに気を取られて最後の追い込みができなかった!
「最初は私が作った現代文です。家族サービスが原因で時間がなかったため、テキトーです」
この高校教師テキトーとか言っちゃったよ!
「てへ☆」
てへ☆じゃねーよ!
「魔が差してやった。反省はしていない」
誰か教育委員会に通報を!駄目だこの人!
「ではテストを配ります」
流れ無視!?
「テストを始めてください」
「テキトーとか言った割に健三先生のテスト普通だったな」
「難しくも易しくもない平凡なやつだったな」
「誤字脱字もないし……何がテキトーだったんだ?」
そこで本人に聞いてみた。
「ああ、一時間で作ったからですよ」
……一時間であの出来映えのテストを作るっておい。
「面倒だったんで」
……この人実は相当の天才じゃないのか?
「次の連休はまだまだ先ですねぇ」
……健三さん、あんた何者なんだ……。