第二話 登校と問題
「徳川幕府第三代将軍は?」
「それは家光だろ」
「正解」
始業式の翌日、つまり今日は実力テストがある。俺と義人は家が近いので、小、中学校時代と同様、一緒に登校することにした。自転車登校になったが、「話しながら登校したほうが楽しいだろ?俺が寝坊したら起こしてくれれば一石二鳥だ。反対はないな?よし決定。イエーイ!!」という義人の一人採決で、なし崩し的に決まった。義人の両親は共働きで朝は早いし、俺も寝坊癖のある馬鹿が気にはかかっていたのでまあ問題はないのだが。
そうしてやはり朝寝坊していた馬鹿をたたき起こして準備させ、テストのために問題でも出し合おうということになった。俺は文系科目、義人は理系科目が得意である。
「よし、次は国語の慣用句でもやるか」
「どんどん来いやー!!」
朝起きてから余りたってないのに、やたらとハイテンションなやつだ。
「気難しい人を心配して扱うのを何に触るようという?」
「<プルトニウムに触るよう>」
確かに危険だが。
「腫れ物だ。次いくぞ。危険な場面に臨む様子を何を踏むという?」
「<地雷を踏む>」
「踏んだ時点でアウトだろ」
「馬鹿だなー。地雷には踏んでから足を離すまで爆発しないのがあるんだよ」
そうなのか…、違う、問題はそこじゃない。そもそも間違えたやつになぜ馬鹿といわれてるんだ、俺。
「正解は薄氷。次。恥ずかしさで人前に出ることができない様子を何ができないという?」
「<一人で靴ひもを結ぶことができない>」
それは人前に出られんな。
「<顔向けができない>だ。もういいから義人が問題出せよ。」
「じゃあ化学な。AgClは?」
「……アンゴルモアとクリントン?」
「お前ほんと化学駄目だな…」
国語が駄目なお前に言われたくない。
テストは俺が化学、義人が国語でほぼ最下位だったものの、得意科目がよかったおかげで二人とも中間くらいだった。この学校に入るだけあって、俺たちの総合力は結構高いのである。
「次回から科目ごとに追試があるってよ」
「…まじか…」
これから一年間、それぞれの苦手科目で追試の常連となるのだが、それはまだ先のことである。