表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/103

第二十七話 寒泳

「なあ、今日はまだゴールデンウィーク中だよな、旦那」

「そうだな」

「ゴールデンウィークってのは休みだよな」

「そうだな」

「ならなんで俺たちは学校に向かってるんだ?」

「水泳部の活動があるからだろ」

「なんで休みなのに部活動があるんだ?」

「小倉さんの趣味だろ」

「ならなんで俺たちは水着を持ってるんだ?」

「泳ぐからだろ」

「まだ五月も始まったばかりだよな?」

「そうだな」

「ならなんで泳ぐんだ?」

「水泳部だからだろ」

「まだ水温二十度にも達してないよな?」

「そうだな」

「ならなんで二キロ以上も泳ぐんだ?」

「小倉さんの趣味だろ」

「小倉さんの趣味ってなんだよ」

「生徒いじめ……いや生徒を鍛えて立派にすることだろ」

「今いじめって言ったよな?旦那もそう思うよな?」

「生徒を鍛え、立派にすることが趣味なんて、なんて立派なんだー(棒読み)」

「無視!?いつもながらひでえ!」

「そんなことよりもう学校だ」

「つっこもうよ!「いつもながらって何だよ」みたくつっこもうよ!」

「今日は小倉さんのメニューらしいし大変そうだな」

「人の話を聞けーっ!」

「はいはい、いつもながらって何だよ。今日もがんばって泳ぐかー」

「何その<もうお前には付き合いきれない>みたいな態度!?」

「おおさすが義人。俺の考えることがわかるなんて。さすがに付き合い長いだけあるな」

「ほめられたのに全く嬉しくねえ!……いやむしろ、ほめられてないのか!?」

「お願いしまーす」

「俺を無視して部室に入ってる!?新手のいじめ!?」

 今日も部活が始まる。



 十五分後には部員ほとんどがプールサイドに集合していた。いじけていた義人もそろっている。現実逃避もほどほどにしてほしいものだ。

 部室まで車(高級車アウディ)で来た小倉さんが、移動式の黒板にメニューを書き込んでいた。……不気味だ。


「旦那、ちらちらと<全力>とか<できないとやり直し>とかいう文字が見えるんだが」

「……気にするな、きっと幻覚だ」

「旦那まで現実逃避しようとするなよ」


「よしできた」

 そう言うと、小倉さんは全員にメニューが見えるようにした。とりわけ目を引いたメニューは<全力で泳げ。ベスト+三秒以内で泳げなければやり直し>(自由形フリー五十メートル)というものだ。

「……まじですか……」

 浜口が悲壮感あふれる表情で尋ねていた。このメニューではベストが速いほど辛いだろうことは想像にかたくない。俺のベストは三十一秒、浜口は二十七秒弱だから四秒の開きがある。それだけに浜口はすがるようだ。

「まじだ」

「…………」

 ドンマイ、浜ちゃん。



 人間寒くなりすぎると麻痺して何も感じなくなる。その後また寒くなるが。そんな環境でも俺たちはなんとかメニューをこなした。そして最後のメニューをやりきった後、浜口を筆頭にみんな死にかかっていた。

「……やっと終わった……」

「……死ぬ……」

「……感覚が……」

「お疲れ、明日は九時半から。マッサージしとけよ」

 そう言い残して小倉さんは車に乗って帰っていった。


「……明日もか……」

「……旦那、小倉さんの趣味って何かな……」

「……生徒いじめかな……」

「……俺もそう思う……」


二人目の感想を頂きました。うれしくてたまりません。こんな短い小説ですが、楽しんでくれる人がいて本当によかったです。5000アクセスも突破して絶好調な<ええじゃないか>はまだ続きます。感想、要望、批評などがんがん送ってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「ええじゃないか」に投票   ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ