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第二十五話 情報

 情報Bという授業がある。この科目はパソコンの基礎から応用まで、幅広い活用法を学ぶ、現代社会に必要な知識と技術を手に入れる重要なものである。最終的には自分たちで一人一つづつゲームをプログラミングしなければならないらしい。

 俺はというものの、パソコンなんてものはインターネットのために家族共用で使うくらいしか使用歴がないため、この科目にはかなり苦戦している。しかしこの学校にはそういうことを得意とするものがかなりの人数いた。具体的には義人とか石井とか。そしてまた一人、明らかに文字を打ち込む速度が異常なやつがいた。……隣の席に。



 情報Bの授業では、工学棟と呼ばれる校舎の情報室(二つある)にクラスの半分ずつ、名簿の奇数番号と偶数番号に分かれて入るのだが、その隣の席の松尾がすごかった。むしろ現在進行形ですごい。今は自由にパソコンを使っていい時間なのだが……

「………」(無言でタイピングゲームをしている)

 なんだこいつは。手の動きが見えん。

「………」(最終面を新記録を出してクリア)

 何か感情に出せよ。新記録なのに。

「………」(裏面が出現した)

 無表情にもほどがあるだろ。

「………」(裏面も無言のままクリア。また新記録)

 見てるだけの俺が興奮してるのに、何でこんなに冷静なんだ。

「今日の授業はこれで終わります。いつものように電源を切っておいてください」

 いつの間にか授業の終わる時間になっていたらしい。パソコンの電源を切った後、せっかくなので松尾に話しかけてみた。

「松尾、すごいな。なんであんなに速く打ち込めるんだ?」

 あまり返事を期待せずに聞いてみる。

「んー、やっぱりいつも打ってるからかな」

 返事がきた。驚きながら、また尋ねてみる。

「何であのゲームやってるとき無表情で無言なんだ?」

「集中してるとそうならない?」

 そういうものか。松尾の場合極端すぎる気もするが。

「部活は何やってるんだ?」

「卓球部だよ」

 意外だ。何かの研究会みたいなのに所属してそうだが。




 その後もいろいろと問い尋ねてみると、科学の大会で東海大会奨励賞とかいうのを取っていたとか、自己紹介の時「暇なときは数学をしている」と言っていた弓削ゆげ(こいつは数学コンクールで全国大会に出場していたらしい。情報のクラスは俺とは別だが、松尾と同じ程度にパソコンを扱えるそうだ)と親友だとかいうことを教えてもらった。やはり類は友を呼ぶのだろうか。そう話してみると、

「そうかもね、三井も杉田と石井と仲いいし」

 という答えが返ってきた。



 ……俺はあいつらと類だと思われているのか……。



 他人の目からはそう見えているという悲しい事実に凍りついた一日だった。

 


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