第二十一話 付き合い
プール掃除最終日。もう一度塩素塗りを終えれば、晴れてプール開きとなる。……水温二十度以下のプールなど、とても入れたものではないのだが。まあそれはさておき、皆の衆と話しながら作業を開始する。
松田「みんなって、彼女いる?」
浜口「何を藪から棒に」
片山「いるよ」
田村「……いる」
片山と田村は水泳部一年きってのイケメンコンビである。……俺の主観だが。
松田「そこのトリオは?」
おれ「トリオ?」
松田「イッシーとスギとみっちゃんの三人。変人トリオ」
この二人と同類にみなされるとは……。おまけに変人て何だよ。俺は北高に残った最後の常識人にして良心だと自負してるくらいなのに。
片山「少なくとも普通ではないと思うよ」
そんな馬鹿な。
田村「……現実を認めろ」
おれ「なら現実のほうが間違ってる」
浜口「……で彼女いる?」
無視ですか。俺の意見は何かおかしいですか。
おれ「いない」
松田「スギは?」
杉田「いるよ、二次元にたくさん」
駄目人間だ。
片山「イッシーは?」
石井「僕もいるよー、二次元に」
こいつらが将来ニートにならないか本気で心配だ。
おれ「浜ちゃんと松ちゃんは?」
浜口「今はいない」
松田「俺も。今はね」
ということは昔はいたのか。
片山「みっちゃんは付き合ったことないの?」
おれ「……ないよ」
杉田「小学校の時にちょっとあったからな」
松田「何があった?」
石井「教えてよー」
おれ「……そのうちにな」
石井に話したら脅迫材料になりかねん。
「ではこれでプール掃除を終わります。ご苦労様でした」
一週間に及ぶプール掃除は部長のあいさつで終わった。汚れていた部分がなくなり、プールが輝いて見える。苦労のかいがあった。
「なお来週からプール開きです。水着を忘れないように」
もっと時間をかけてじっくりやればよかった。
「先生、どれくらい泳ぎますか?」
初めだから水慣れ程度だよな、というかそうしてくださいお願いします。
「二キロ位だな」
「……ギャグ?」
小倉さんが「ギャグだよーん」などと言ったら、それはそれで恐ろしいものがあるが。
「もっと多いほうがいいか?」
鬼だ。
「……わかりました……」
……雨が降ったら中止にならないかな……。