表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/103

第十九話 親睦

 この日の作業はプールの内壁に塩素を塗ることだった。と言っても個体の塩素をそのまま塗るのではなく、バケツに水を張り、その中に塩素を溶かしてブラシで塗る。塩素はプール全体に塗るので、壁と底の隅々まで塗らなくてはならないので注意が必要だ。

 この作業は一度だけでなく乾いたらもう一度やる。これが終われば後はプールに水を張るだけなので、気合いを入れてやるようにとの部長のありがたい訓示で説明は終えられた。例によってだべりながら作業を始める。


松田「水泳部の親交を深めるのにはどうすればいいと思う?」

田村「なんだ突然。どうかしたのか?」

松田「いや、水泳部の仲を深めるにはどうすればいいかと思って」

片山「カラオケに行くとか?」

浜口「そういうことでいいのか?」

松田「そうだな、カラオケはいいかもしれんな」

杉田「でも先輩がゴールデンウィークに新入生歓迎会するって言ってたぞ」

おれ「そのときにカラオケもするかな?」

石井「そうみたいだよー」

松田「そうか……、ほかには何かあるか?」

浜口「昔話をするとか」

田村「昔話?」

浜口「昔話と言うと語弊があるか……。要は俺たちの小、中学校時代を話そうってことだよ」

片山「過去を話すってことだね」

石井「それは好都合だねー」

田村「好都合……?」

おれ「ごめんなさいどうか勘弁してくださいお願いしますそれだけはっ!」

田村「……どうしたんだ三井、その土下座するんじゃないかってほどの勢いは……?」

松田「悲壮感にあふれまくりだな……」

杉田「旦那の過去はトラウマの宝庫だからな。ただでさえネガティブだし」

浜口「やめにするから元気出せよ」

杉田「また嫌な思い出でも思い出したんだろ、大丈夫か?」

おれ「……ありがとう……」

石井「残念だねー」

松田「別の意見はあるか?」

片山「うーん……、あだ名をつけるっていうのはどうだろう?」

田村「いいんじゃないか?」

おれ「……」(あだ名に関するトラウマを思い出してる)

浜口「よし、反対意見はないな。まず俺のは何かあるか?」

杉田「アニマル」

浜口「却下」

松田「まさる」

浜口「却下」

石井「文句つけすぎだよー」

浜口「今の二つは問題あるだろ!」

片山「もう昔みたいに浜ちゃんでいいんじゃない?」

浜口「……何かほかには?」

石井「<モーレイ>っていうのはー?」

浜口「なんかかっこいいな、それ。どういう意味だ?」

石井「ある魚の英名だよー」

浜口「なんて魚だ?」

石井「ウツボ(硬骨魚。口、歯が強大。性質は凶暴で激しく噛みついてくる)だよー」

浜口「……浜ちゃんでいいです……」




 その後も一人一人あだ名をみんなで考えていった。最後の一人、俺。

田村「<保護者>はどうだ?」

浜口「<ツッコミ>も捨てがたい」

片山「<ストッパー>でもいいんじゃない?」

おれ「……意味は……?」

浜口「もちろん<スギ>(義人のあだ名)と<イッシー>(石井のあだ名)に対する位置付けだ」

おれ「……何で俺のあだ名は役割なんだよ……」




 結局俺が泣いて頼んだので<みっちゃん>という平凡なものに落ち着いた。

 ……小学校の時みたくならなくてよかった……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>現代コミカル部門>「ええじゃないか」に投票   ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ