第十三話 朝
北高への登校前、例によって義人と一緒に登校しようと呼びに行ったのだが、この日は少しばかり勝手が違っていた。チャイムを鳴らしても、携帯にメールをしても電話をかけても全く応じないのである。
「まさか事件か何かに巻き込まれたわけじゃないよな……」
新聞で見た強盗殺人の記事が目に浮かんだ。早合点するなと思いはするものの、悪いほうへ悪いほうへと想像が膨らむ。
「大丈夫だよな……」
そう言いつつドアに手をかけると簡単に開いた。鍵がかかっていなかったのである。
「本当に大丈夫だよな……」
早足で義人の部屋に向かった。義人の部屋のドアを開けると、机に義人が突っ伏していた。
「……!?おい義人!?大丈夫か!?」
焦って義人に駆け寄り、義人の体を強く揺すった。そうして揺すり続けると、義人が何かをつぶやいた。
「……」
「義人!?どうしたんだ!?」
「……もえたよ……」
……燃えた!?
「何が!?何が燃えたんだ!?」
「……真白に……」
「だから何がどうして燃えたんだ!?」
そう俺が強い口調で尋ねると、義人はこう言った。
「……萌えたよ……萌え尽きた……真白にな……」
机の上ではパソコンが<fin>の画面を映し出していた。
「つまり徹夜でパソゲーをやっていたと」
「うむ」
「しかも十八禁のを」
「ああ」
「それをクリアして気がゆるんでそのまま寝てしまったと」
「その通りだ」
「……ふざけんなぁー!!!」
「うわ、どうした旦那!暴れるな!」
「俺の純粋な心配を返せぇー!!!」
「心配って何の?」
「うるせぇー!!!」