特jd対策第十六実験部隊No.6(前編)
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
その男の思考はその一つで埋め尽くされていた
男はゆっくりと歩を進める
少し高めの身長と、さっぱりとした短髪。爽やかな顔立ちに浮かべた柔らかな笑み
普通の好青年に見える彼ではあるが・・
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
標的を 殺す 事に染め上げられていた
振りだした雨粒が彼の身体にぶつかっていく
小走りに避難していく人を気にもせず、彼は目的地へとゆっくり歩いていく
彼にも名前はあった
帰る所も、家族もいた
しかし、今は・・
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
彼が こう なってしまったのは3日前
彼は自衛軍の中でもエリートであり、とある部署にて関東地区エリアサブリーダーの地位にいた
しかし、それは1週間前までの事
彼は降格してしまったのだ
対外的には、部下の失態への責を自ら負い、部署を離れた・・とあるが、実のところ、監視対象への尾行がことごとく失敗し、隠しきれないと判断した結果・・報告書を偽造してしまうという、管理者にあるまじき行為の結果である
偽造した報告書を提出した翌々日、エリアリーダーからのメールで呼び出された彼は、指定のあった廃ビルを眺める
人気の無い通りに面した通用口には、ボロボロになって剥がれ落ちそうな立ち入り禁止のテープ
付近に人が居ないことを確認し、彼はテープをくぐり抜けて中に入る
エリアリーダーの指示通り階段を上り、2階に続く踊り場にあった壊れたカードリーダーに身分証を通し3階へ
コンクリートが剥き出しの、ある種の寒さを感じさせるようなフロア。その場所を不思議に思いながらも、指定された柱に右手をかざす
ピッ
電子音が鳴るのと同時に、行き止まりと思っていた壁が静かに開き始める
壁が開ききり、その奥には扉がある。扉を開けるとその奥にも扉
ふと気になり後ろを見たが、そこにあるのは白い壁だけだった
結局その後3回ほど扉をくぐり、網膜認証と声紋認証のある扉を開く
扉の先は、廃ビルには有り得ない光景
頭上に展開し、様々な景色を映し出す数々のモニター、そして机上に映っている地図を見ながら誰かに指示を出している、10人程の情報士官と思われる者達
「早く入りたまえ!」
鋭い声に叱責され、自分が扉を開けたまま固まっていた事を彼は思い出す
急いで入り、扉を閉め、声の元へと急いで向かう
情報士官と一通りの挨拶を済ませ、手短に説明されたエリアリーダー用に設置された個室へと向かう
「入れっ!」
個室に足を踏み入れ挨拶を済ませると、そこには東京都第8区エリアリーダーである河元大尉の他に
関東地区統括である黒須中将
特jd対策本部 主席研究員の稲村大佐
が、彼の目に入った
彼は緊張で震えそうになる心を何とか制御し、呼ばれた理由を考える
「・・・・・・」
無言で足元に放り投げられる書類
「・・君には失望したよ」
突き放すように言い放った大尉を見て、彼は一瞬にして理解する
偽造が知られてしまった事を
何とか自らを正当化させる理由を紡ぎ出そうと、口が動き始めた途端
首から何かが流れ込む違和感
言い訳をしたいのに口がうまく動かない
何故か、言おうとした言葉が・・言おうとした意識が・・少しずつ、白く塗りつぶされていく
視界が激しく動く
何で灰色の壁が
目の前に?
そうか、後ろに倒れ
足から力が・・腕も・・首・・・・動かせな
早く言い訳を
あれは部下の
なんだっけ
薄れ行く彼の意識
最後に見えたのは、
稲村大佐の 心の底からの 笑顔だった
仰向けに倒れ意識がなくなった彼を冷徹に見つめる3人
すぐに入ってきた下士官が彼を外へと運び出す
「後2.3人欲しいですねぇ」
ニヤニヤしながら稲村大佐が河元大尉を見る
「こ、これ以上は・・」
「もう充分ではないのかね?当初の予定人数は達しているはずだが?」
渋い顔をした河元大尉。その言葉をさえぎった黒須中将は、不満を隠さずに顔に浮かべる
「壊れることを考えると・・ね」
「うちから提供出来るのはここまでだ」
「はぁ、仕方ありませんね・・」
しぶしぶ引き下がる稲村大佐
その様子を見て河元大尉は胸を撫で下ろす
彼を含め関東地区だけで5人。中将から聞いた話だと、全国から50人近く集められているらしい
ある意味、何かしらの問題を抱えた者が連れていかれるので、それほど大きな問題にはなってはいない
・・しかし、この部署に抜擢されている時点で優秀なのだ
これ以上の戦力低下は許容できない
・・例え、化物を殲滅させるための作戦の為だとしても
後編へ続く。