序章 ココロの終わり
ぅ・・ぅあ・・あああああああああああああアアアアアアアぁぁぁーーーーーーーー
降りしきる雨の中
全ての音を拒絶するような、そんな豪雨の中
青年の、その、全てを切り裂くような絶望の声は
ただただ 悲しく 灰色の雲に覆われたこの世界の中に響いていく。
座り込んだ青年の手元には 黒と赤に彩られた 丸みのある固まり
固まりを胸に抱く青年の体は、ソレから流れる赤に染まっていく。
何故だ・・何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ
何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっ!
永遠に答えの出ない そんな問い掛けが青年の頭を埋め尽くす。
青年の体に包まれた固まり・・その固まりは・・血を流し続ける人の頭。
ソレは青年のよく知る 身近な 大切な 存在。
守りたかった。笑顔を守りたかった。傷付ける存在から守りたかった。
出来なかった。守ることが出来なかった。
青年の絶望を洗い流す為なのか
全ての罪を流しきる為なのか
天上より流れ落ちる雨は、降り止まない
どれくらいの時が流れただろうか
青年の身体より・・いや、抱いている頭部より、淡い光が漏れだす。
驚愕の表情でそれを見る青年。
そこから蛍のような光が飛び立つ。
徐々にその光は増えていき・・その全てが天へと引き寄せられていく。
行くな 行くな 行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな行くな
行くな行かないで頼む行かないでくれ俺を置いていかないでくれっ
青年は蛍に 血塗られた右腕を伸ばす。
確かに光を掴んだはずの手には
何も残らない。
何も 残らなかった。
空に溶けていく蛍の光。
青年は飛び立つ蛍を掴めない。
その事実から目を背けるかのように、光へと伸ばしていく青年の右腕。
すでに声を枯らし 溢れる涙はそのままに
左腕で光の固まりとなった大切な人の頭部を抱きしめる
ふと、左腕にあったモノが落ちてしまった そんな 感触が
青年の意識を下に向けさせる。
下へと落ちていく光の固まり
それは 蛍を旅立たせながら 小さくなっていき
音も無く 全て光となり やがて消え行く
力無く 何もない地面を見つめ 呆然と立ち尽くす青年。
最期に飛び立った光の蛍が、青年の頬に優しく触れるような軌道を描く。
青年の耳に 大切な 大切だった人の声が 守りたかった人の声が響く
さようなら お兄ちゃん
初めまして。拙い文をお読みいただきありがとうございます。