黒と恐怖
夕です!
クソ親父が来て、もう何日経っただろう。
毎朝、騒がしいし…はっきり言って、帰ってほしい。
レナもあれから変な目で見てくるし!!
「あ″ーくっそー!!」
「は?」
「…別に」
隣を歩いていたカナタが顔をしかめる。
最近はいっつもイライラしてしょーがない。
「あー…親父さんのことか?」
「そ、何でここにいるってわかったんだぁ?」
───今、向かっているのは屋上。
ガネル達に呼ばれて、いっしょに昼メシ食いに行くとこ。
「(行きたくねー…)」
『あの弁当…いいのか?』
肩の上のミオをべしっと叩いて、落とす。
『痛いだろう!!』
「よかったね♥」
「おいおい…」
『ミオ…』
語尾に♥までつけて、黒い笑顔のリュカ。
カナタとギオウはふくれっ面で飛んでいるミオに目をやって苦笑い。
これでいーんだよ!!
あの弁当の話はすんな!!
───と、そんなこんなのうちに屋上へついていた。
「リュカ!!カナタ!!」
「早く!!待ってたんだからね」
「遅いですよー!!」
だいぶ待ってたな、こりゃ。
駆け足で3人のところへ行く。
「ごめーん」
「さ、早く食べましょう!!」
リルが言って、みんな準備を始める。
その一分後。
「…ックククク…おい、レナ、リル見てみろよ」
「なによ…っえ…!?」
「…可愛いです…」
やっぱりなー。
もうどうとでも言ってくれ。
「リュカ、これ誰が作ったんだよ」
「クソ親父」
みんなが笑っているのは、あんのバカが変なもん作りやがったから。
ぼくの持っている弁当は…
「LOVE…リュカ…」
ガネルが先に読んでくれる。
オムライス。で、ケチャップで“LOVE♥リュカ”と書いてある。
ここまでくると、気味悪いよ…。
「「おー…」」
「「ははは…」」
4人とも引いてるしよー…。
ちなみにぼく以外は購買で買ったパンとか食べている。
「ほんっとおもしれぇな、リュカの親父さん」
「…そ、かなぁ」
カナタに言われ、溜息を吐く。
そして、荒々しくスプーンをオムライスへ突き立てた。
午後。
ぼく達は授業が始まるまでの時間を、教室でのんびり過ごしていた。
ガネルは、窓辺の棚に登っている。
「次何だっけー?」
「魔法の歴史です…」
一同、溜息。
マジかよ、めんどくせぇ。
「一番嫌いな授業じゃない」
レナが言って、ポンと棚の上へ。
ぼくとカナタも続く。
最後にリルを引っ張り上げた時───
ガシャンッ!!
教室中に響いた大きな音。
───と、同時に
『おわっ!!』『キャア!!』
「な…っ…」
そこは、悲鳴に包まれた。
どうやら音の正体は、ぼく達の後ろとは違うもう一つの大きな窓。
その大窓は4枚ともきれーいに割れていた。
「なんで…?」
「ボールか?」
しかし、何処にもボールの姿はない。
「こわいです…!!」
「なんで急に割れるのよ!!」
リルはレナにしがみついている。
教室にはたくさんの破片が散らばり、怪我をした生徒もいるようだ。
しかし、恐怖はそれだけでは、終わらない。
ガシャンッ!!
再び大きな音。
そう───続いてぼく達側の窓も───。
「危な…!!」
「ぅおっ!!」「くそっ!!」
慌てて叫んだ時には、ガネルがレナ、カナタがリルの腕を引っ張っているのが見えて…ぼくと4人は無事、棚を飛び降りていた。
さっきまで座っていたところには、ガラスの破片が…。
「大丈夫!?」
「なんとか…リュカは?」
「うん…無事…」
カナタにそう答えて、ガネル達の方を見ると、3人は床に座り込んでいた。
「痛ってぇ…」
どうやら、ガネルが腕を切ったらしく、血が滲んでいた。
「大丈夫?ごめんね…」
珍しくレナが謝っている。
「こんなのすぐ治るってー」
それを聞いてぼくはほっとした。
───と、同時に、割れた窓の方を向いた。
でも…なんで…
窓が一度に割れるなんて。
なにか、不安になってしょうがない。
ぼくが人界にいるから…?
ぼくを狙って何者かが窓を割ったのだとしたら。
次期神様のぼくを狙って。
だから…バカ親父は、人界へ来たのだとしたら…。
考えがつながってしまう。
「リュカ?どっか怪我したか?」
ガネルに声をかけられて、我に返る。
「いや………」
何者かがぼくを狙っている…その考えはしばらく消えなかった。
そのころ、校舎の陰に、黒マントの男が駆け込んだ。
「あいつだ…次期神…」
男は、ニヤッと笑うと姿を消した。
次は秋雨さん!