恍惚とした笑みと紅い花弁
緋絽です!
セダの右脳辺りに柄をぶちあてる。
セダが左に吹っ飛んだ。
「う……いてて……2人ですか。卑怯だなぁ」
「このままだとどっちかが倒しちまうからな。俺達は2人とも、お前が意識あるうちに痛めつけたいんだよ」
「そうそう」
剣を握り変えてフフッと笑う。
「ミオもギオウも強いからね」
セダがぼくに飛び掛ってきた。
ひらりとかわして背中に蹴りを入れる。
「なぜ………」
屈辱からか、セダの体が小刻みに震えている。
「ぼくが勝者、お前が敗者だからだよ」
「………なんだと……」
「それをじっくり時間をかけて教えてやるよ」
剣を振り上げると、セダはカナタに向かって走り出した。
カナタなら勝てると思ったのか?
自然と笑みが漏れる。
「ああああああ!!」
珍しく声を出して仕込んでいた剣を出しカナタに切りかかった。
カナタが右手だけで受けとめる。
それを見てセダから余裕の色が消えた。
カナタが表情ひとつ変えず剣を払い、セダを地面に転ばせた。
「残念だったな」
カナタが片頬で笑う。
………カナタ。黒いデスヨ。
「お前は俺達に敵わねーよ」
ぶつぶつとセダが呟いている。
「何言ってんだ、こいつ」
「分からない」
「……………俺の想いは……願いは………こんなにすぐ消されてしまうものじゃない…………」
「は?何言って――――――」
「我が一族の恨みはこんなものではない!!」
カナタに向かって何か投げた。
「!カナ……!!」
立ち上がったセダがカナタを切りつけた。
赤い花弁が散る。
その花弁がぼくにはりついた。
―――――違う、花弁じゃない。これ……は………。
カナタの血だ。
ドクンと心臓が鳴る。
「ぐ……っめ、目潰しかよ………不意打ちくらっちまった……」
カナタの胸から血が落ちる。
赤。緋。朱。紅。あか。アカ。
許サナイ セダ。
セダを切りつける。
花弁がぼくを赤く染める。もうすぐぼくは花弁に覆いつくされるだろう。
セダがぼくに花弁を投げた。
――――――キレイ、だな。
~ミオside~
『……リュカがキレた………』
『すごいことになってるな』
『………あれ?』
『ん?どうし……』
不意にリュカが空を仰ぐ。
そしてセダを見て――――。
私の顔から血の気が引くのが分かる。
おそらくギオウも私と同じなのだろう。
そしてセダを見て、恍惚とした艶やかな笑みを見せた。
『な……なんだ……?』
『なんで……笑って……』
ブルッと背筋が寒くなる。
身がすくむとはこういう事をいうのだろう。
その笑顔は人を惹きつけ、そして怯えさせた。
美しいが恐ろしい。
息を飲み込んでしまう。
『リュカ………』
~リュカside~
顔にはりついた花弁を払う。
手がすでに赤く染まっていて、少し黒い。
セダが荒い息をして肩を押さえている。
一番深手を負った場所がそこらしい。
許さない、セダ。
またカナタを傷つけた。
キチ…と剣を握りなおす。
セダの目に恐怖が浮かんだ。
殺ス。セダ。
剣を振り下ろそうとして、誰かに手を掴まれた。
「落ち着け……リュカ………」
耳元でカナタの声がする。
振り払おうとしたら脇にカナタの手が入った。
背中にカナタの体温を感じた。
体をおさえられる。
「お前が……復讐をするな……」
息が、荒い。息が、熱い。
「お前…は…っ、神だ……っ。戻れなくなる……」
「カ…ナタ……」
「お前が今、復讐……して…、天界に戻れなく……っなった…ら……俺は…」
腕に力がこもる。
「自分を……憎む…っ」
力強く頬を殴られた気がした。
カナタの息が、体温が、力強さが、ぼくを現実に引き戻す。
「カナ…タ……、カナタ……」
「俺、ピンピンしてるから。落ち着け」
「カ……ナタ……」
よかった、元気だ。
後ろを向いてカナタに抱きつく。
「よか………っ」
涙が出てきた。
フゥとカナタがため息をついて頭に手をのせた。
「よか…っ、よかった……!また……入院ってことになったらどうしようかと………」
カナタが笑ってパシッと頭をはたく。
「わっ」
「泣くなよー!」
「だってーーー!!」
「俺の始末は俺がつける」
「カナタ?」
「お前が赤く染まるのはあんまり見たくない」
ハッとなって体を見る。赤い花弁じゃなく、血で染まっていた。
「うわ……」
「見てろって」
カナタが剣を出し、ニヤッと笑った。
次は夕さん!




