あいつと出会い
夕です!
ところ変わって、ここはある建物の廊下。
「…ヤバい、迷った」
リュカは壁に寄りかかった。
リュカの右手には、少し錆びついた鍵。
これは、リュカのものになるらしい部屋の鍵だ。
ついさっき…あのボサボサ男(実は学園長さんだった)に無理矢理わたされた。
「寮って言ってもさぁー」
広い、広すぎる。
「やっぱ、言われたとおり…管理人さんに聞きゃよかったぁ」
学園長は“管理人に連れていってもらえ”と言ったのだが、カウンターにそれらしき人物は見えず、リュカは1人でエレベーターに乗ったのだった。
「ここ何階だよ…」
右手の鍵をみる。
部屋の番号は《445》。
「(もう一個前だったら444。不吉…)」
「で、ここはどこだーっ」
───と、ガチャッ
「うるさいですよ。誰ですか?」
「うわっ…」
すぐ前のドアが開いて、緑の髪の少女が出てきた。
「あれ?初めて見る顔ですね?」
「え、うん…今日初めてここに来た」
「そうですか。…わぁっ」
少女は急に部屋から出て、リュカに飛びついて来た。
「えっちょっと…!」
そして後ろで一つにまとめているリュカの髪を掴んだ。
「痛ってぇ!!」
「すごいです!きれいですっこの髪!!」
「離せよ!!痛てててて…!!」
そう言っても少女は黄緑色の目を輝やかせて、離さない。
ようやく離してもらえた時には、リュカは涙目ではぁはぁ言っていた。
「すみません!!私、リル・ネイルです。とってもきれいだったので…」
「ぼ、ぼくは、リュカ・ホーリー。よろしく…」
リルは何度も頭を下げている。
「(あ、そうだ。部屋のことこの人に聞こう。)あの…」
「なんでしょう」
「ぼくの部屋、445なんだけど……どこかわかる?」
リュカが尋ねると、リルはすぐ答えた。
「はい。このすぐ上ですよ」
────リルは親切についてきてくれた。
確かに部屋にはすぐついた。
しかも本当にリルの部屋のすぐ上。
「ん?誰かいる…」
「あっ」
リルが駆け出す。
リュカも走ってついていった。
「おっ、リル!!」
2人の男女がこちらを向く。
「ガネルくん、レナちゃん。何してたんです?」
「…その前に、そいつは誰だ?」
と、赤目赤髪の少年。
リュカは自分で答える。
「リュカ・ホーリーだ。今日からここに来た」
「えっ、編入して来たの?」
と、今度は橙色金髪の少女。
「ああ。よろしく、……えっと……」
「俺は、ガネル・ラ……」
「あたしは、レナ・カルラよ。よろしくね、リュカ!!」
「よろしく」
……完全に無視して話を続けられた、ガネルはリュカとレナの横でリルに肩を叩かれていた。
「…で、俺達はここでさ…」
「(立ち直りはやっ)」
そして、こいつおもしろそーと、リュカが考えていたのは、ガネルには内緒。
レナが引き継ぐ。
「カナタを起こしてたの」
「あら…またですか」
リルは苦笑する。
「また……って?」
「カナタくん、すぐ寝ちゃう上に、なかなか起きないんですよ」
「だからあたし達はいいめーわくなのよね」
「そろそろ飯の時間なのにさ」
3人は口々に言う。
「カナタ…?」
リュカにはわからないことだらけだ。
「カナタ・ヴォルテスよ。あたし達の友達」
レナが答える。
「ふぅん…。(どんなやつだろ)」
と、リュカが考えていると、444号室のドアがバンッと開いた。
『あっ』
3人が同時に声を上げる。
「俺の部屋の前で…何してんの…」
黒目黒髪の少年がそこに立っていた。
「やっと起きたか、カナタ!!」
「待ってたのよ!!」
「おそいです!!」
廊下が一度にうるさくなる。
カナタはくあっと大きなあくびをした。
「悪ぃ…」
リュカは無言でその様子をながめていた。
カナタ…ヴォルテス。
リュカから見た第一印象は不思議な人。
───と、カナタがこちらをむいた。
「「ん?」」
二人の声が見事にハモる。
…これがリュカとカナタの初対面となった。
次は秋雨さん!