吸血鬼と本気
秋雨です!
ブンッ ブンッ
くそっ当たんねーっ!
「ちょこまかちょこまか動くんじゃねえよっ!」
ブンッ
チッ、また外れた。
先から何回【純白】を振るっただろう。軽く20回は越えたか?
なのにかすりもしない。どういうことだっ!
あー、くそっ!イライラする。
魔力制御の指輪2つ、いや3つぐらいはずそっかなーとか思ってたら男が口を開いた。
「フンッ。次期神もこんなものか。天界もたかがしれてるな」
ブチッ
そーかそーかそんなにぼくを怒らせたいか。
ふふふっ。いいぜ?そんなに怒らせたいなら。
「お前のそのムカつく笑い、今すぐ消してやる」
本気で殺ってやるから。
ぼくは【純白】に魔力をこめて走り出した。
「フッ、その程度の攻撃で私を倒せると思うのか?」
男は完全にナメていた。
「あぁ、倒してやるさ」
さっきとは桁違いのスピードで【純白】を振る。
「なっ!」
男は後ろに飛んで逃げるが、左肩が少し切れていた。
「チッ。なかなかやるな」
「テメーもな」
ぼくは男の後ろに回り込み、首を狙って【純白】を振った。
しかし、切れたのは男のマントだけだった。
「あー、くそっ!隠れてねーで出てこいっ!」
ぼくは、一本の木に向かって叫ぶ。
「……………よくわかったな」
その木の上から男が降りてくる。
「見つかりたくなかったら殺気を隠せ」
「それもそうか」
男はさもおかしそうに笑う。
男が黒い短髪に紫色の目をしたどこにでもいそうな奴だった。
口の両端からのぞいてる犬歯を除けば。
「ふーん。お前、吸血鬼か」
「ご名答」
男は背中からコウモリのような翼を出す。
「ふう。翼をしまっていると窮屈だな」
「翼よりも羽って感じじゃね?」
「それでは、始めようか」
あー、ムシされた。てかスルーされた。
男の手に太い針が握られている。
それを見たぼくは戦闘体勢をとる。
そのまま男とボクは動かない。
と、いきなりぼくの後ろの茂みがガサガサッと揺れ、そこからカナタが顔を出した。
「お、リュカ!こんなとこにいたのか。そろそろ帰るらしいぞー」
「ちょ、待てっ!出てくんな!」
「は?」
ぼくが止めてるのにもかかわらず、カナタはフツーに出てきた。
「もらった!」
そこに男が襲いかかる。
「くっ」
体をひねって避けたが、完全に避けきらず左の二の腕を掠った。
「チッ」
「おい、リュカ!大丈夫か!?」
「あたりまえ」
近づいてくるカナタを押し戻す。
カナタの目線はリュカから男に移る。
「ヴァンパイア………?」
フツー、ヴァンパイアを見たら驚くのに、カナタはなんでいんだよ的な顔をしている。
さすが自由人。
カナタの目線に気づいた男はなぜか震え始めていた。
「おい」
カナタが声をかけると男はビクッと跳ねた。
「っ、こ、今回は見逃してやる。覚えとけ!」
そう言って男は逃げようとした。
「ちょっと待て」
「ギャッ!」
ぼくは【純白】を投げて男の目の前に刺す。
「名前教えろや」
名前わかんねーと呼びづらいし。
「ヴィ、ヴィストだ。覚えておけ!」
今度こそ男───ヴィストは去っていった。
「リュカ、今のヴァンパイア………ヴィスカだっけ?何なんだよ」
「それはこっちが聞きたいよ。ヴィルドじゃなかったか?」
「それより、帰るぞ」
「おぉ」
ぼくとカナタは教室に戻っていった。
「な、なんなんだ、あの黒髪」
もうすでに名前を間違えられている男、ヴィストは木の枝の上で震えていた。
「この私が震えるなど………。ただ者ではないな」
それからヴィストは少し考えた。その結論が…。
「よし。あの黒髪も次期神と一緒に処分しよう。これも、魔王様のため………」
次は緋絽さん!