リルとエル
夕です!
「うっわ、べしょべしょだ…」
後ろでまとめていた髪をほどいて、頭をぶんぶん振る。
「ふーん、誰のせいかなぁ…?」
ガネルがイライラした様子でぼくに迫る。
「つーかガネル。僕が一緒に潜ってなかったら、今頃死んじまってたからな」
「あー…そっか」
「わかったか?」
それにしてもみんな水びたしだ。
このままじゃ、授業に戻れない。
さて、どうしようかね。
「そーだ!!」
「?どうしました?」
「リル、エル出してくれない?」
「……?いいですけど…」
リルはキョトンとしたが、不思議そうな顔で目を閉じた。
すると、さぁ…と風が吹いてリルの隣にエルが現れる。
『なんでしょう、リル様』
「あ、ぼくが説明する」
「あら、そうですか?」
「えっと、見ての通り、みんなびしょびしょなわけ。エル、なんとかできない?」
エルは微笑んだ。
『簡単ですよ』
「じゃー俺から頼む」
カナタが言うと、再び風が吹いてエルは竜の姿になった。
おーでっけー…
『いきますよー』
エルは翼を羽ばたかせる。
ふわっと優しい風が吹く。
「おっ乾いてく!!」
ほんとだ。みるみるうちにカナタの服も髪も乾いていく。
「次、いいですか?」
「あたしも一緒に!!」
続いてレナとリルが。
「次、ぼく!!」
ぼくもしっかり乾かしてもらって。
「俺が最後だな」
『はい、そこに立っててくださいね』
ガネルがエルの前に立つ。
『では』
ん?エルの目がキランと光った気が…。
そして…。
ビュオォオォォー!!
「のわっ!!」
明らかにさっきまでより強い風を起こす。
「おいっな…なんだ!?」
『あら、ごめんなさい。でも、すぐ乾きましたよ』
ようやく風がおさまる。
「へ、へ、へ…?」
…今日わかったこと。
使い魔は召喚した人に似る!!
急いで授業に戻るが、すでに始まっていた。
「カナタくん!!リュカくん!!レナさん!!リルさん!!…………と、ガネルくん!!どこ行ってたんですか!!」
珍しくノウが怒った顔でぼく達の前に立つ。
「(殺されかけましたー)川で遊んでました!!」
ぼくが代表で言うと、ノウは溜息混じりに言った。
「はぁー…早く行ってください。もうみんなは散らばってますよ」
『はーい』
「じゃ、後でな」
ぼくらはバラバラと走って散った。
みんなもノウも見えなくなる。
さて、どうしよう。
授業は森の動物と触れ合うってやつだけど。
よし!!サボろう!!
適当にその辺の木に寄りかかる。
いい時間になったら帰ろっと。
「…………………………………ヒマ」
なんかおもしれーことねーかなぁ。
じっとしていたらヒマでしょうがない。
またブラブラ歩き出す。
───と、
ゾクッ
急に寒気がした。
「(まーた、あいつかなぁ…)出てこいよ」
「……………」
しばらくの沈黙。
しかし、気配はする。
「出てきたほうがいいと思うけど(早くフルボッコにしたいんだよねー)」
「……………」
「10秒以内に出てきてよ。はい、10ー、9ー、8ー…」
「………いいだろう」
フォンと音がして、少し離れたところに黒いマントを羽織った男が現れる。
意外にのりやすいタイプ?ほんとに出てきてくれるとは…。
【純白】を出して、構える。
フードの下で男がニヤッとした。
「構えねぇの?こっちから行くけど?」
「…………………」
また無言かよ。
だっと駆け出す。
ぼくにつきまとってたこと、後悔させてやるよ!!
次は秋雨さん!