黒い風と白銀の剣
緋絽です!
教室でぼくは考えこんでいる。
ぼくを狙ってる奴がいる───。
さて…。
クックックッと笑みが漏れる。
どうしてくれよう…!
『リュ、リュカ…?』
ミオがビクッとなって下から顔を覗いてくる。
「あぁ…いや…なんでもない……」
『そ、そうか…』
「おっはよー、リュカー!!」
レナが元気よく挨拶してくる。
「おはようございます、リュカくん。今日はお早いんですね」
「うん、まーねー」
ちょっといろいろ考えたくて。
ガネルがブツブツと呟きながらカナタと歩いてきた。
「ど、どうしたんだよ…」
カナタにボソッと囁く。
「“俺は呪われている”って言って怯えてるんだよ」
………ハハハ。なーるほど。
「みなさーん、席についてくださーい」
ノウが入ってきた。言葉にしたがって席に座る。
「今日は実習です。山へ行って生き物達と触れ合いますよー」
「山ぁ?」
「生き物も使役できてなんぼですから!さぁ行ってください!」
みんな急いで立つ。
「また遠いわけ?」
「闘技場に比べたらなんぼかマシなんだけどね!」
「ふーん」
じっとカナタを見る。長く見つめる。
カナタが両手を挙げて諦めたように溜息を吐いた。
「わかったわかった」
手を掴まれる。
「“───時間を繋ぎ我を導け───《転移》”」
足が浮いた次の瞬間、山の中にいた。
それから少し経って3人が走ってきた。
「ま…また負けたぁー!」
「「イエーイ」」
カナタと言葉を重ねてVサインをする。
ゾクッと寒気を感じる。
また…!誰か狙ってやがる…!
「ぼく、探検してくる」
「は?でも、もうすぐ時間…」
「大丈夫だよ、すぐ戻るから」
木々を掻き分けて奥に進む。
「……………………あの…なんで、付いてくんの?」
「だーって」
「俺らだって探検したいもーん」
「です」
「だな」
「……………」
汗が流れる。
ま、何かあったらぼくが敵さんをフルボッコにすればいいか。
「まあ、いいけどさ…」
木の間を抜けて川にでる。
でかい岩のある河辺に歩いていった。
「わー、水ですー!」
大きい音をたてて3人が川の中に入っていった。
「濡れるぞ、お前ら…」
「いーのいーの」
溜息を吐いて───何か飛んでくるのを目の端で見た。
ヤバい!
川に入ってガネルとリルを掴む。
「ん?」
「リュカく…」
「息吸って」
「「えっ───」」
深く水中に潜る。
そこで気づく。
しまった。カナタとレナが…!
くぐもった音と共に2人が潜ってきた。
ほっとする。
───と、川に波がたった。
「っ!!」
体が揺れる。
おさまってから水面に出る。
「ブハッ、ゲホッ、ゴホッ」
ガネルとリルが咳こんでいる。
隣にカナタとレナも出てきた。
「リュカ…っ、お前何すんだよ…っ」
前髪をかきあげて周囲を見渡す。
どこだ?どこにいる?
背後に気配を感じた。
バッと後ろを振り返る。
岩の上に黒マントの男が立っていた。
顔はフードに隠れて見えない。
クソ…ッ!!
【純白】を出す。
それと同時に相手から黒い風が飛んできた。
【純白】を力任せに横に薙いで相殺させる。
「………………チッ」
景色がブレて男が消えた。
「な…なんだ、今の…」
周りの木が一本残らず倒れている。
水に潜って正解だった。
じゃなきゃ今頃みんなは上半身がなくなってるところだ。
「リュ…リュカ…ッ」
「え?」
「大丈夫?」
「う、うん」
水を服から滴らせて川から上がる。
「帰ろう」
どうやらそこそこできる奴みたいだ。
ニヤッと笑う。
楽しみだ。
次は夕さん!