恋人は机
たぶん彼女は君を縛り付けている鎖。
歩くほどに締め付けられ、苦しむ。
逃げられないし、解けない。
君を縛り続ける鎖。
流石のあたしにも壊せないや。
……やあ、僕だよ。
……テンションが低い?
……仕方ないなー……。
やあ!!僕だよー?
いやいやー、それにしてもねー。
目の前に黒髪ストレートロングの綺麗な美少女さんが立っていらっしゃるのですよ。
美少女より美人より?
ま、どうでもいいや。
名前は天草霧野ちゃん。
確か……前の世界にいた気がするけどー。
何でこんなところにいるんだろ? って前で疑問に思ってたけど面倒くさくて考えるの止めちまったぜ。
で……僕に何の用かな? 霧野ちゃん。
「はじめまして……ではないわよね?」
だって前の世界でお会いしましたからね?
「……ところで何で話さないのかしら?」
なぜなら僕は女子と話すが苦手なのさ☆
「どうせ頭の中で『僕は女子と話すのが苦手なのさ☆』なんて思ってるんでしょうが……」
おぉー君アレかい? 心を読める方か何かですか?
「貴方の考えることなんて大体理解できますよ。前の性格のままだったらですけど」
あっれー意味有り気な言い回しだねぇー……ゾクゾクしちまうぜ。
前の性格かどうか僕には分からないけど、そんなに僕って分かりやすい奴なのかい……?
「喋らない理由分かってるつもりですけど……」
ん? 1回区切ってどうしたんだい?
「……あまり思いつめないでくださいね」
…………。
「失った時間は戻ってきませんし、失った人はもういません」
…………。
「悪かったのは貴方ではないのですから、あまり思いつめないでください」
ハァー……アレだよアレ。
お前は僕のお母さんか! ってツッコミたくなる話し方だね。
こういう話は聞き飽きた。
だから紙に返答を書いて机と恋人になってくるよ。
「ふふっ『うっせー』ですか。変わってないくて何よりで」
1人の少女は微笑みながらその席をあとにした。