どうでもいいヒーロー
私が君を好きになった理由。
それは守ってあげたくなるから?
カッコいいから?
それとも主人公だから?
肯定も否定できない自分が嫌い。
やあ、僕。
なんだい、僕。
好きな食べ物はなんだい? ねえ、僕。
それは僕が一番知ってるだろう? なあ、僕。
こんな遊び終わりにしよう、僕。
ああ、そうだね、僕。
2人合わせて僕だよ。
いやー分身っていいねー、分身。
僕と一緒の顔したやつがもう1人いて、僕の代わりに色々してくれる。
執事だ!
そうそう、執事執事。
最近流行ってるのかな? 執事。
僕は結構好きだよ、黒い執事さんとか。
主人公が執事ねぇー……。
不幸体質の執事ってのも僕は知ってるし。
キャラが被っちゃうじゃないか。
辞め辞め執事はいいや、僕のキャラじゃないし。
でも分身っていいよねー?
忍者っていいよねー?
忍術っていいよねー?
というか異能な力っていいよね?
自由自在に空を飛び回ったり。
手から火をだしたり。
未来が読めたり。
まあ、僕は主人公だから何でもできるけど。
小さい頃を憧れたなー。
超能力者。
あるいはヒーロー。
自分の周りには常に人がいて。
自分はみんなから頼られていて。
何でも出来るヒーロー。
そんなどこにでもいて、どこにもいなくていい奴……。
そんな者に憧れていた時期もあったなー……。
分身程度でキャーキャー言ってた昔の自分がバカらしいよ。
それに懐かしすぎて欠伸が出ちまうぜ。
まあ、憧れは絶望で終わったんだけど。
前の僕は、どこにでもいて、どこにもいなくていい奴になれたのかなー。
そして今の僕は、どこにもいなくて、どこにでもいそうな奴になれたのかなー。
ま、どうでもいいような話だけど。