真っ暗な掘削
この話はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。
またネタバレになりますが今回は話は前半はホラー、後半はギャグです。
ザクリ、ザクリと音がする。
夜のとある墓場、そこで墓守をするわたしは日課である墓場の見回りをしていると、耳に土を削り掘り起こす音が入る。ほんの微かな音だったため、足を止めて耳をすます。
ザクリ、ザクリ。音は休む事なく聞こえて来る。墓場の敷地内で勝手な掘削作業は禁止されている。墓守として止めねばと意を決して音のする方へと足を速めて進む。
音のする場所には直ぐに着いた。音の主は私の存在には気づいていないのだろう。他に音の鳴らない暗闇の中でただただ鍬を握り地面に向かって突き立て穴を掘っている。わたしは恐る恐る土を掘る相手に声を掛けた。
「あの…申し訳ありませんが、墓場で許可もなく穴を開けるの止めてください。あっいや!そもそも許可もできませんが。」
わたしは焦り説明が可笑しな事を口走ったが、相手はそんなわたしの事など全く気にせず、ただただ穴を掘っている。それほどまでに熱心にされると、わたしは穴を掘るのを止めるよりも気になる事を聞きたくなった。
「…一体、何の穴を掘っているんですか?」
相手の並々ならぬ熱意の様なものを感じてわたしは口をすぼめながら声に出した。
「私、埋められたの。」
わたしの声に応える様に相手が返事をした。しかし返って来た言葉にわたしは声が出なかった。
「私ね、埋められそうになった時言ったの。止めて、止めてって言ったの。なのに止めてくれなくて、結局土に埋められたままほっとかれて、おかげで私、こんなになっちゃったの。それが許せなくて、赦せなくて、止めてって言ったので、何度も何度も何度も何度も言った。許せない赦せないユルセナイ!
…だからね、埋めたの。」
何を、とわたしは息を飲みながら聞く。そして相手、泥に汚れて裾が大きくほつれてしまった死装束を纏った白い肌の女性がこちらに体ごと顔を向けた。
「…私を埋めたこの男を。」
女性が掘った穴の底には真新しい土が盛られ、その土からは男性らしき頭と手足がのぞいていた。
―
「まじで信じられない!恋人がシんだってのに棺桶代ケチる!?おかげで棺桶の隙間から雨漏りして折角シぬ前に用意したドレスがもうどろっどろ!
本当にこいつったら!出会って一緒にいた時から気が利かないというか、毎度毎度変な所で節約だ何だの、贈り物まで安いのばっかり!
こいつのせいでこっちがどんだけイライラさせられたか、いっぺんあんたも埋まりなさいよ!っていうか埋めてやるわよこのっこのっ!」
そう言い女性、もといゾンビは怒り任せに鍬で土を穴に向けて投げ落とし、埋められた男性は「ごめんなさい!ごめっ…ぶえっ口に土入った!」と呻きながら女性ゾンビに懇願する。わたしはそんな二人のやり取りに口を開けて唖然としていたが、直ぐに立ち直り二人を間に割って入ってなんとかその場を制した。
その後、女性ゾンビの棺桶は古い者から少し値の張る新品のものと取り換えられ、それ以降女性が生前の怒りで棺桶から抜け出す事はなくなった。男性の方は女性ゾンビからこってりとしぼられて、女性ゾンビの墓場の前で何度も頭を下げて墓参りをする姿が数日見られる事になる。
土を掘る音の代わりに、今度は男の啜り泣きが聞こえて来る。
「正確には女性を埋めたのは墓守であるわたしだから、責められるのはわたしなんですが。」
「いや、そういう問題じゃないだろ。」
後日、話を聞いた先輩墓守からツッコミを入れられたわたし、墓守が住むこの世界では、シ人が動くのが当たり前の日常です。なのでこういうトラブルが偶にあるのでご注意を。
企画参加のため、シリーズものである「墓守シ人喜譚」の番外編として書かせていただきました。
主観主である墓守と、最後に出て来た先輩墓守については本編をお読みください。ちなみに二人共動くシ体です。
誤字脱字がありましたら、随時ご連絡ください。




