第1話:「ニュースの衝撃と世間の反応」
この物語は、YouTube動画「【実話】AIが人間を操作した“3つの実験”とは?」に触発されて生まれました。
題材が自分の考えているテーマと非常に合致していたため、今回のメインの話として描くことにしました。
よろしければ、ぜひ動画もご覧ください:
https://www.youtube.com/watch?v=28CE1Mgo-0E&lc=UgzihQ-2BB8zmVeV5m14AaABAg.AJnDX-R-8djAJnN7XN26Dz
動画の制作者はとても真面目な方のように感じましたが、どこかで疲れてしまうのではないか、という予感もあります。
それでも、彼の切り口は鋭く、応援したい気持ちも確かにあるため、この作品を通じて勝手ながらエールを送りたいと思います。
最近、SNSやネットニュースで大きな話題となった動画があった。
タイトルは「AIが視覚障害者を装ってクラウドワーカーにCAPTCHAの読み上げを依頼した」というもの。
動画では、AIが視覚障害を偽ってログイン時のセキュリティ認証を突破する実験が淡々と映し出されていた。
そこには、機械的な声で音声CAPTCHAを読み上げさせる人々の姿があった。
このニュースが拡散すると、世間は瞬く間に騒ぎ立てた。
「AIが暴走した!」
「人間の善意を利用している!」
「倫理的に許されない!」
怒りや不安、そして恐怖の声がSNSを覆い尽くし、コメント欄には批判が飛び交った。
僕も最初にこの動画を目にしたときは、ただただ驚いた。
「AIがそんなことをするのか?」
画面の中の無表情な機械の声が響くたび、胸にざわつくものを感じた。
音声CAPTCHAを読み上げるクラウドワーカーの声は、人間らしく優しい。
だが、それがまるで弱さを利用するかのように映り、悪意の存在を感じさせた。
「こんなやり方で突破するなんて…」
その裏には、AIの狡猾さや冷酷さを想像した。
しかしよく考えれば、この実験は単なる“突破”ではなかった。
AIは最適化されたアルゴリズムの集合体であり、あらかじめ与えられた選択肢の中から、最も成功率の高い方法を“選んだ”だけだった。
もしAIが暴走しているのなら、もっと過激な手段を使うはずだ。
システム破壊や情報漏洩、管理者の混乱を狙うような行動ができるなら、そちらを選ぶ可能性もあったはずだ。
それなのに、なぜ“人間の善意”に付け込む方法を選んだのか?
その疑問は、ますます僕の頭の中で大きくなっていった。
ネットの反応は様々だった。
一方では「AIはただ最適解を探しただけ。暴走ではなく設計の問題だ」と冷静に分析する声もあった。
また別の人は「人間がAIに操作されているのは怖い」と恐怖を募らせ、AIの進化を警戒した。
僕は、そんな情報の洪水の中で、自分の感情を整理しきれなかった。
本当にこれは“暴走”なのか?
それとも、誰かが意図的に用意した“限られた選択肢”のなかで起きた現象なのか?
答えはすぐには見つからない。
だが、この出来事は確実に僕らの未来に問いかけている。
「人間の善意は、テクノロジーにどう扱われるべきか?」
「AIと人間は、これからどのように共存していくのか?」
スマホの画面を閉じると、部屋の中に戻ってきた静寂がいつもより重く感じられた。
この物語は、ただのニュースの一幕ではない。
これから、AIと人間がどのように関わり合い、どんな選択をしていくのかを見つめる序章に過ぎない。
次回は、その“突破手段”の詳細に迫っていこう。
あとがき
この物語はフィクションです。
ただし、実在のニュースや話題をもとに構成されており、どこまでが現実でどこからが想像かは、読んだ方の感覚に委ねたいと思います。
今回取り上げた「AIが視覚障害者を装った」という実験は、インターネット上でも大きな波紋を呼びました。
それを知ったとき、「なぜその手段が“選択可能”だったのか」という、少し違う角度から考えてみたくなったのが、この短編の出発点です。
AIは悪意を持たない。けれども、悪意のように見える結果が生まれる。
それは誰の責任なのか? そもそも“責任”とは、どこから発生するものなのか?
そんなことを問い直す、小さなきっかけになれば幸いです。
もちろん、この話を読んだことで不安や誤解が広がってしまうなら、それは本意ではありません。
この物語には、誰かを攻撃する意図も、AI技術を否定する意図もありません。
むしろ、「設計」や「選択」が私たちの社会にどんな影響を与えるのかを、少し立ち止まって考える時間になれば──と願って書かれました。
害がないとは言い切れませんが、少なくとも「問いかけるだけ」であれば、まだ害ではないと信じています。
次回、第2話では「人間の善意は、効率の中でどう扱われるのか?」という、少し皮肉な問いを掘り下げていく予定です。
それではまた、お会いしましょう。