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外に出かけよう

 ストーンマキガンの街では雨が降り続いている。いつもの時間になっても礼拝堂の扉が開かないことに外で待っていた人々はイライラし始める。扉を大きく叩く音が礼拝堂に鳴り響く。

「いつもだったら私が脅かせばみんな逃げていくけど、今日はそういうわけにはいかないかな。良い考えが浮かぶと良いけど……」

 レテは目を閉じ、考えを巡らせる。ミヤも真似をして考えはじめる。

「街の人々にどのような話しが広がっているか検討も付きません。このまま扉を開けるのは無謀でしょう。どうしたものか」

 ドロスは良い考えが浮かばない。

「昨日の夜の時点だとレテがラトゥールの末裔である事に目覚めたって話は神殿に来る途中で聞いたわ。広まっているかは定かではないわね」

 ラーナは情報を提供する。

「私たち神官の仕事です。お任せください、どうにもならなかったら騎士団の方の助力を求めます。レテ様は隠れて頂いたほうが私どもは対応しやすいです」

 神官長は昨日から考えていた事をレテに伝える。

「隠れるのはイヤ。ストレスがたまっちゃうかな、全員ラトゥールの力で身の程をわきまえさせるのが一番!誰にも私のじゃまはさせない」

 レテは精神を集中させる。光をまとった三本の風の槍が現れる。昨日とは違いレテの身長程の大きさだ。

「どんどんラトゥールの力を使いこなせるようになっているわ、レテ。魔術はもっと時間を掛けて学んでいくもの、うらやましいわ」

 ラーナは風の槍を観察する。ドロスも一緒に見つめている。

「やっつけるんですか。何も悪いことはしていない人たちです。これから神殿で暴れるかもしれませんから先制攻撃が大事なのですね」

 ミヤはレテの判断を予想する。

「ウウン、面倒になってきちゃった。後の事は副騎士団長かセオが処理するかな。誰も何もしなかったらネアスが上手くやってくれないわね、ガーおじも無理ね」

 レテは先制攻撃を辞めようかと思う。

「アーシャさんなら何とかしてくれるでしょう。優秀な方です。美しくて強い女性です」

 ドロスはつぶやく。

「アーシャに迷惑をかけたくはないかな、世の中上手くいかないものね。せっかくすごい力を手に入れているのに、ぶっ放せないなんて損、損」

 レテは風の槍を上空で回して遊びだす。ラーナは憧れの目で見ている。

「ラトゥール、私にも力を貸してくれない。お友達になりましょう、色んな人と仲良くするのも楽しいわ。気が向いたら声をかけてね」

 ラーナはラトゥールにお願いをして観察に戻る。

「私が一度話を聞いてきましょう。危なくなったらすぐに扉を閉めます。私を残して扉をしめないでください、お願いです」

 ドロスは扉を開けてその様子を偵察に行く。レテは手を振って見送る。

「ここで閉めたら、後でドロスさんに説教を受けます。ガマンします、レテ様」

 ミヤは心を抑え込む。レテは大きくうなずく。

「説教なんて怖がってちゃダメ。やりたいことをしなさい、ミヤ。その代わり責任は自分で取るのよ」

 レテはミヤに助言をする。ラーナも大きく首を縦に振る。

「風の神殿にお祈りに来た人たちでしょ。暴れてもコワくはないから閉めちゃえば良いわ。私なら迷わず閉めるわ、決断するまでもないわ」

 ラーナもミヤに心に従うように進める。神官長がミヤの前に立ちふさがる。

「レテ様とラーナ様は特別です。ミヤ様は神官見習いですので遠慮したほうがよろしいです。他にも楽しいことはたくさんありますので心配しないでください」

 神官長の説得にミヤはうなずく。

「私も修行を頑張ってレテ様とラーナ様のように振る舞えるようになりたいです。目標が出来ました」

 ミヤは今から頑張る気持ちになってきた。

「それにしてもネアスとガーおじは起きてこないわね。ちょっと心配になってきたかな。様子を見に行こうかな。これが私の悪いところよね、やさしすぎるかな」

 レテは寝室に歩を向けようとするがラーナが彼女を止める。

「悪い所は治すべきよ。最初は大変だけど後々楽になるわ、私からのアドバイスよ。ちなみに今回は見に行っても良いと思うわ。ネーくんも大変だったみたいね、石職人ギルドもなかなか難しいのね」

 ラーナはレテを見送ろうとするがレテは動かない。

「ラーナにはギルドの事を話したのね、私は信頼されていないのかな。シルちゃんはどう思う、答えは簡単ね」

 レテの声に応じて風の槍がクルクル回る。ラーナの目が回りそうになるが観察は辞めない。

「信頼しているからこそ言えないことがあります。ドロスさんの買った本に書いてありました。本当かどうかは知りません」

 神殿の図書室は私物と神殿の物が混ざっている。

「いかつい人がいて緊張して上手く話せなかったって言っていたわ。明日からはラトゥールの力でぶっつぶせってアドバイスしたわ。レテからも言ってあげた方が良いわ、相手を倒す快感を覚えるべきよ」

 ラーナはレテにネアスと話した事を伝える。レテは気をよくしたようだ。

「ラーナの言うとおりよ、やっつければ何も問題なし。悩む必要はないわ、他にも考える事はたくさんあるわ。騎士団特製パン、特製ドリンク、ピクニック、他にもあったけど今は出てこないかな」

 レテはうれしそうに答える。ミヤもうなずく。

「晴れの日にピクニックに行きたいです。今日はあいにくの雨ですけど、早く予定を立てたいです。いつにしましょうか」

 ミヤはレテがピクニックに行かないと思っていたので急いで約束を取り付けようとする。

「子供の頃は良くピクニックに連れて行ってもらったわ。王都の近くにも良い場所があるのね。私も王立図書館に寄った後にでも遊びに行こうかしら」

 ラーナは故郷の森を思い出す。

「雨の日のリンリン森林も楽しいわ。いつもと様子が違って新鮮な気持ちになれるかな、地面が滑りやすいのが問題だから今日一人で行ってみようかな」

 レテは気分転換をしたい。

「ドロスさん遅いですね。私も様子を見てきます。帰りが遅い時はガーおじ様を起こして援軍によこしてください。レテ様とラーナ様はゆっくりしていてください」

 神官長は彼女たちが暴れるのを警戒する。レテはうなずく。

「こういう時は責任者が出ていけば収まるものよ、ガンバロ、ガンバロ」

 レテは神官長を応援する。ミヤも一緒だ。神官長は笑みを浮かべて外に飛び出していく。

「どうするの、レテ。私たちを止める者はみんないなくなったわ。後は好き放題よ」

 ラーナはレテの考えを読む。レテは首を縦に振る。

「好きにして良いってなると迷うわね。不意打ちで槍を出して脅かすか、それともここは二人に任せて遊びに行くのも良いかな」

 レテはどちらにしようか考える。

「私はネアス様たちが目覚めるのを待っています。レテ様を一緒に行きたいですが足手まといになりそうです。成長したらお供したいです」

 ミヤは元気に答える。レテは微笑みかける。ラーナはミヤの頭をなでであげる。

「ミヤは立派ね。私の子供の頃は勉強ばかりで人に気遣いなんて出来なかったわ。大人のすることは何でもバカに見えたし、実際私の方が優秀だったから仕方がないって最近理解したわ。私は偉いわね」

 ラーナはミヤをほめつつ自画自賛する。

「ミヤも一緒にいた方が楽しいけど神官長が心配するかな。私は町長の家で情報収集でもしてこよ。ラーナはどうするの?」

 レテは裏口から隣の町長の邸宅に向かおうと足を進める。風の槍は出したままだ。

「私は一緒に行かせてもらうわ。ラトゥールの力を見定めさせてもらうわ。昨日は途中からしか見れなかっから今日はバッチリね」

 ラーナはフードを被りレテの隣を歩いていく。

「いってらっしゃい、レテ様、ラーナ様。お昼はどうしますか。準備しておきましょうか」

 ミヤはレテに確認を取る。

「お昼はマリーのお店で食べる予定だからダイジョブ、ダイジョブ。昨日のお礼もしっかりしないといけないし、今後の予定も立てたいかな」

 レテはラーナに確認する。

「私は構わないわ、いつもの宿の料理も飽きてきたしマリーとも知り合いになりたいわ。ドリンクをたくさん買いたいわ」

 ラーナはミヤに手を振ってお別れする。

「ネアスには今日は考えたいことがあるから会わないことに決めたって伝えるようにドロスに言ってね。ミヤがネアスに伝えちゃダメ、約束よ」

 レテは最後にミヤに伝える。ミヤはドキッとするが返事をする。

「約束します。ドロスさんにそのまま伝えます。私にはまだ分からない問題です、いつか分かるようになりたいです」

 ミヤは二人に手を振り、ガーおじたちの朝食の準備をしようと食堂に向かう。

「二人には一人きりの時間が必要なのね。ラトゥールの力は人々に影響を与え続けている。クロウが朝言っていたわ。それはレテも例外ではないのね」

 ラーナはレテに問いかける。

「シャルスタン王国ではラトゥールの名は特別。帝国にでも行けば違うのかな、私にはわからないかな。キミはホントにラトゥールなの?」

 レテの問に答えるように裏口を風が開ける。外は雨が降り続いている。

「答えは外の世界にある。神殿の中には何もない、ラトゥールの答えをそう受け止めても良いの、レテ。単純すぎる答えね。もっと意味が深いハズ」

 ラーナは思考を巡らせて答えを探る。

「ラトゥールが外に行きたい、それは確実かな。答えを探るのは私の役目ではないわ。冒険者が追い求めるものよ。魔術師もそうなの、ラーナ」

 レテは外の様子を確認しながらラーナに問いかける。

「私は答えが欲しいわ、たとえ答えがない問題でも解答なしはありえないわ。何かしらの痕跡と手がかりはある。ラトゥールの力の意味はあるはず!」

 ラーナはレテに偵察を任せている。

「騎士は任務を果たす、それが最優先かな。今日の任務は何にしようかな」


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