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決断の時は近い

 レテのお話が終わり図書室は静けさが戻る。ネアスはレテのやさしい語りでリラックス出来たようだ。ガーおじは起きるタイミングを見計らっている。

「ガーおじは朝まで寝かせておこうかな。今、無理に起こす必要もないし精霊伝説を読もう

かな」

 レテは先程から集めていた精霊伝説をネアスに指し示す。床にきれいに一〇巻並べてある。

「いつの間に集めていたの、レテ。ガーおじを見つけた後に僕も探そうと思っていたけどレテの方が早かったか。僕の一敗だ!」

 ネアスは素直に敗北を認める。

「勝負をしているわけじゃないけど、もらえる勝利は頂いておくわ。ありがと、ネアス」

 レテは楽しげに勝利数を数える。ネアスは精霊伝説の一巻の途中から読み始める。

「石当て、小石飛ばし、マリーのお店のアルバイト、他にもあるわ。どこかで整理したほうが良いかな」

 レテも日記をつけようかと考える。ガーおじが二人の隙を見つけた。

「勝負、何の話じゃ。ワシも興味があるのじゃ、勝負は勝つのが大事なのじゃ」

 ガーおじは本を倒しながら起き上がる。レテが整理していた場所まで本が飛んでくる。

「ガーおじ、本は大事に扱いなさい。一度しか言わないからしっかりと覚えておくのよ、記憶喪失は通用しないわ。この日のことは忘れないかな」

 レテはガーおじ探しの勝利も数える。

「起こしてしまったみたいだ。ごめん、ガーおじ。それでもガーおじに相談したいことがあったから良かった」

 ネアスはガーおじの目覚めを喜ぶ。ネアスの喜ぶ顔を見るとガーおじにも元気が湧いてくる。

「ネアス殿、気にすることはないのじゃ。ネアス殿の相談であればいつでもどこでもワシが聞くのじゃ。さあ、さあ、ゆっくりと話をすると良いのじゃ。散らかっている部屋で申し訳ないのじゃ」

 ガーおじはレテの注意を受けて丁寧に本を横に積み重ねてスペースを取る。

「私は席を外そうかな。男同士で話したいこともあるでしょ、どうしようかな」

 レテは一応気を使おうとするが話の内容が気になるので動きが鈍い。

「レテも一緒の方が都合が良い。三人で話し合いたいことがあるんだ。大事な話しさ」

 ネアスは息を吸って心を整えようとする。

「付き合いは三日だけだが日数は関係ないのじゃ。ワシら三人の絆は固く結ばれているのじゃ。記憶が戻ったとしてもワシらはずっと一緒なのじゃ」

 ガーおじは喜びに打ち震える。

「ガーおじ、ホントにどうしたの。ギルドから帰ってきた後から感動してばかりじゃない。ガーおじはまったりゆるふわシブおじだったかな。ちゃんとは覚えていないわ」

 レテはガーおじの様子に心配を募らせる。

「レテに心配してもらってうれしいのさ。きれいでやさしい人に気を使ってもらうのはうれしいものさ。人生の喜びさ」

 ネアスもガーおじに共感する。ガーおじは大きく首を横にふる。

「違うのじゃ、レテ殿ではないのじゃ。ネアス殿、そなたの気遣いがうれしいのじゃ」

 ガーおじはネアスにお礼を言う。

「ネアスは気が使えないわ。ガーおじの勘違いよ、私はきれいでやさしくてかわいいから気を使ってもらえているかな」

 レテはガーおじに対抗心を燃やす。

「レテの言う事も間違いではない。僕はガーおじに気遣いはしていないと思う。尊敬はしているけど参考にはならない」

 ネアスは本音を述べる。ガーおじは大きくうなずく。

「ワシはネアス殿に尊敬されているのじゃ。ヒシヒシと感じるのじゃ、プレッシャーになっているのじゃがそれが心地よいのじゃ」

 ガーおじも本心を語る。レテは上手く飲み込めない。

「ガーおじは変な体質ね。プレッシャーが心地よいなんて変わっているわ。リラックスした方が力を発揮できるわ」

 レテはネアスに同意を求めようとする。

「発揮する力がないのが僕さ。ゴブジンセイバーの力を引き出せないのは僕の責任さ」

 ネアスは腰の剣を大事そうに触る。

「心配ないのじゃ、時が来ればゴブジンセイバーはネアス殿の力になるのじゃ。ワシがレテ殿のように出来れば良いのじゃが……」

 ガーおじはレテを見つめる。レテは目を背ける。

「シルちゃんの事は私には関係ないかな。私がお願いしたからって他の人の言うことを聞く子じゃないのは知っているわ」

 レテは半信半疑ながらも毅然として答える。

「今日はゴブジンセイバーでもシルフィーさんの話でもない。気にはなっているけど分からないことはどうしようもない。ガーおじに相談したいことはラトゥールの末裔の事だ」

 ネアスは本題を切り出す。ガーおじは猛烈なプレッシャーを感じる。

「レテ殿と決めたと思っていたのじゃ。ワシはネアス殿の人生の決断に関われるほど良い生き方はしていない気がするのじゃ。記憶がないのも問題じゃ」

 ガーおじは床を見つめる。

「人生の決断って程でもないわ。これからずっとラトゥールの末裔だと思われるだけよ。やることなすこと末裔だからって思われるだけ、ダイジョブ、ダイジョブ」

 レテは二人をリラックスさせようとする。

「レテの言葉を聞くと体が固くなって動かなくなる。僕はこれからどうなるのだろう」

 ネアスに不安が押し寄せる。

「ワシはタダの記憶喪失のまったりゆるふわシブおじなのじゃ。ネアス殿とレテ殿は大変なのじゃ」

 ガーおじはリラックスする。

「私はきれいでやさしくてかわいい、そして才能豊かな精霊使いの騎士。ネアスは謎の剣を携えたラトゥールの末裔。ガーおじは記憶喪失のオジ。三人は一緒ね!」

 レテはまとめに入る。ガーおじはイヤな感覚になる。

「謎の剣を携える?カッコいい、レテ。これなら僕はやっていけそうだ」

 ネアスは急に元気を取り戻す。

「ゴブリンの神官からもらったゴブジンセイバーじゃ。謎の剣ではないのじゃ、レテ殿。ウソはイケないのじゃ」

 ガーおじはレテに突っかかる。レテは正面で受け止める。

「名前が全てではないわ、ガーおじ。中身、すなわち力が大事かな。その力が謎だから私は真実を告げているわ」

 レテの言葉にネアスはうなずく。

「レテは冴えているね。謎を探求するのが冒険者さ。僕にその謎を解き明かす自信はないけどやってみるだけさ。レテとガーおじも一緒ならなんとかなるさ」

 ネアスは二人を交互に見る。レテはやさしく微笑み、ガーおじはネアスを見つめて何かを考えている。

「記憶が戻ったのじゃ、ワシはラトゥールの末裔だったのじゃ。急に記憶が戻ってきたのじゃ。記憶とは不思議なものじゃ、何がきっかけだったのじゃ」

 ガーおじは棒読みで話し出す。彼はおじでは満足出来なかったようだ。

「そんなわけないでしょ、ガーおじ。どうしたの、何か悲しいことがあったの?私で良かったら何でも相談に乗るわ。アーシャやドロスは相談に乗ってくれないと思うから私に相談するのよ、絶対!」

 レテはガーおじが傷つかないように気を使う。

「ガーおじがラトゥールの末裔だったのか。全ての謎が解けた。レテは僕の幸運の女神様、ガーおじは僕の尊敬する勇者だ」

 ネアスはガーおじを熱い視線で見つめる。ガーおじは彼の視線に耐えられずにレテを見る。彼女はまだ心配そうな顔をしている。

「ネアス殿、ワシは勇者ではないのじゃ。ラトゥールの末裔に過ぎないのじゃ、勇者となるべきなのはゴブジンセイバーを持つネアス殿なのじゃ、幸運の女神様についてはノーコメントなのじゃ」

 ガーおじは突っ走る覚悟を決める。レテは不満を隠さない。

「私が幸運の女神じゃないって納得がいかないわ。私と一緒だからゴブジンセイバーも手に入ったし、ガーおじの記憶も戻ったのよ。説明しなさい、ガーおじ?」

 レテは指をガーおじに突きつける。ネアスは二人の間に入ろうとする。

「レテは幸運の女神。賛成二で問題ないさ。ガーおじがラトゥールの末裔も賛成二さ、バッチリだ。ガーおじは尊敬する勇者は今のところ賛成一だ」

 ネアスは投票結果を集計する。

「ワシも尊敬する勇者に賛成することにしたのじゃ、賛成二じゃ」

 ガーおじはもらえるものは全部貰うことにした。レテは反対意見を述べる。

「自分で尊敬するのは変な話ね。追加でガーおじがラトゥールの末裔って言うのは私が反対するわ。賛成二で反対一よ。ネアスはどう判断するのかな」

 レテはネアスを見つめてプレッシャーをかける。

「レテの反対の理由を聞きたい!ガーおじの記憶より説得力のある事をレテは知っていると良いけど……」

 ネアスはレテが負けることを心配する。

「ワシの記憶は戻ったのじゃ、これはレテ殿でも覆る事は出来ないのじゃ。ワシの勝利は確実なのじゃ」

 ガーおじはウソがバレないように大口を叩く。レテは気にしないで理由を述べる。

「ガーおじの記憶は戻っていないわ。理由は分からないけど彼はウソをついているかな。何故かは全くわからないわ。謎を追い求めるネアスには理由が分かるかな」

 レテはネアスに問いかける。彼はすぐに理由を悟る。

「ガーおじは僕たちの代わりのラトゥールの末裔の重責を担ってくれるつもりなのさ。僕が頼りないのが問題点だ。ガーおじの記憶が戻っていないならだけどね」

 ネアスの答えにレテは納得する。ガーおじは静かに天井を見上げる。

「流石なのじゃ、ネアス殿。しかし、間違いがあるのじゃ。ネアス殿は頼りになるのじゃ、経験が足りないだけなのじゃ。心配することはないのじゃ」

 ガーおじはウソをつき続けることをあっさりと諦める。

「良かったじゃない、ネアス。私はきれいでやさしくてかわいい才能豊かな精霊使いの騎士。ネアスは謎の剣を携えたラトゥールの末裔。ガーおじはオジ、三人は一緒よ」


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