リンリン♪
風の神殿の図書室でネアスはレテの子供の頃の話を聞いている。ガーおじもバレないようにレテの話に真剣に耳を傾けている。部屋の外では何も起こっていないようだ。
「昔々、王国に精霊使いがいました。精霊使いは風や火や水を自由に操り、様々な事件を解決しました。王国に事件がなくなると旅に出てしまい、その後も事は誰も知らないという話。リンリン♪」
「リンリン♪精霊伝説のモデルになった人だよね。本当は実在しないって話だ。残念だね」
「女の子がお父様に詳しく話を聞こうとすると疲れたから寝るって言われました。話は今度するから今日は早く寝なさい!リンリン♪」
「リンリン♪大人は疲れる、仕方がないさ」
「女の子の頭の中は精霊使いの事でいっぱい、いっぱい。早く話が聞きたくて朝が待ち遠しくなりました。リンリン♪」
「リンリン♪時間の感覚が違うのかな。難しい問題だ」
「眠れなくなった女の子はシルフィーに話しかけました。さっきの風はあなたの力ですか、面白いからまた今度見せてほしいな。後は一緒に冒険の旅もしようね」
「リンリン♪シルフィーさんはやさしいからお願いを聞いてくれるさ」
「お父様がケチでおいしいごはんを食べに連れて行ってくれない事と仕事で帰りが遅い事もついでに話しました。リンリン♪」
ガーおじは本の重みに耐えている。とても重く感じられてきた。
「リンリン♪田舎は良いさ、もともとたいした物を食べる事が出来ない!」
「いつの間にか女の子は眠り、次の朝を元気に迎えました。お父様より早起きをして、庭で走り回って遊んでいました。リンリン♪」
「リンリン♪レテは子供の頃から元気いっぱいだ。僕も見習わないといけない」
「お父様も早起きして剣術の訓練を庭で始めました。その時に強風がお父様に吹き付けました。お父様は良い訓練になると喜んでいました。リンリン♪」
「リンリン♪レテのお父さんも剣術の訓練を欠かさないのか。僕も頑張ろう」
「ムリしない、ムリしない。女の子も真似をしたくてお父様の近くで強い風を一緒に受けようとすると風は弱まってしまいました。リンリン♪」
「リンリン♪強風は苦手な人が多い。でも、レテは好きか」
「女の子はシルフィーに呼びかけました。強い風を私にもお願いね、お父様だけはずるい!お父様は笑いながら訓練を続けます。リンリン♪」
「リンリン♪ずるいのかな、ずるくはないさ」
「強い風は吹かずに気持ち良い風が二人を包みました。女の子もお父様も不思議な風を感じてキョトンとしました。リンリン♪」
「リンリン♪強い風が吹くことはあるけど、風に包まれるのはシルフィーさんの力に間違いない」
「お父様は昨日の夜の事をやっと思い出しました。精霊使いの話。騎士団の本好きの子が精霊使いの話をしていたと女の子に伝えました。リンリン♪」
「リンリン♪騎士団には色々と詳しい人がたくさんいるのか。うらやましい」
「女の子はすぐにその人に会いたくなりました。お父様に一生のお願いをしました。でも、お父様は女の子のお願いを断りました。リンリン♪」
「リンリン♪忙しかったのかな、仕事の日は仕方がないさ」
「女の子もその日は風の神殿で勉強をする日だったのを忘れていました。女の子はお父様と一緒に風の神殿まで歩いていきました。リンリン♪」
「リンリン♪僕の田舎でも神官さんに勉強を教えてもらったな。どこでも一緒か」
「女の子はお父様にお別れをした後に神官さんは友達に精霊の話をしました。みんなは精霊については知らないって言いました。リンリン♪」
「リンリン♪僕もレテに会うまでは精霊がいるとは思わなかった。子供の頃に読んだ精霊伝説が唯一の知識さ」
「女の子の友達の一人が精霊について知っていると言いました。精霊伝説に書いてあるから読んでみると良いよ。本屋さんに置いてある楽しい本?!」
「リンリン♪精霊伝説が出た頃の話か。もう一〇年も前になるのか?!」
「女の子は楽しみで仕方がなかったけど真面目に勉強しました。お昼ごはんも上の空でした。リンリン♪」
「リンリン♪レテは子供の頃からしっかりしているね、流石だ」
「女の子は帰り道に急いで本屋さんに駆け込みました。精霊伝説はちゃんと本屋さんにありました。リンリン♪」
「リンリン♪精霊伝説の三巻が楽しみになってきたよ。レテのお陰だ」
「期待し過ぎはダメ!女の子は精霊伝説を買おうとしましたがララリが足りませんでした。急いでお家に帰って貯めていたララリを集めました。リンリン♪」
「リンリン♪僕はララリを貯めない。貯まる前に使う」
「ガガガガ……」
ガーおじも同意する。
「女の子が頑張って集めたララリでは精霊伝説には残念ながら到達しませんでした。女の子はお父様が帰ってくるのを待つことにしました。リンリン♪」
「リンリン♪子供のお小遣いだと本を買うのは難しい。これもどこでも一緒か」
「女の子はいつもはお友達と遊んでいますがその日は急いで一人で帰っていたのでシルフィーと遊ぶことにしました。リンリン♪」
「リンリン♪精霊と遊ぶ?!」
「昨日のように強い風を起こしてもらおうとしましたがシルフィーに上手く伝わりません。女の子は飽きてリンリン森林に遊びに行こうと思いましたがその日はお父様にお願いがあるのでやめました。リンリン♪」
「リンリン♪計算も大事さ」
「しばらくシルフィーに呼びかけて遊んでいました。ずっと話しかけていたら庭に風が吹きました。女の子は満足して家の中でお父様を待つことにしました。リンリン♪」
「リンリン♪シルフィーさんは昔からやさしい」
「その日はめずらしくお父様は早く帰ってきました。ウキウキした顔で騎士仲間から聞いた精霊伝説の話をしました。火の精霊の話、主人公の話。リンリン♪」
「リンリン♪お父様の判断は正しいのか。レテの楽しみを奪う可能性もある」
「女の子は素直にお父様に言いました。イジワルしないで本を読ませてほしいかな。お父様は謝ってくれました。でも、本は買って来なかったと言われました。リンリン♪」
「リンリン♪騎士の教育方針なのか」
「お父様はこう言いました。あれは物語だからレテが読む必要はない。精霊使いになるための本ではないから別の本を今度神殿の図書室で探そう、リンリン♪」
「リンリン♪真っ当な答えだ、びっくりした!」
「今日神殿で神官さんたちに聞いたら知らないって言われたとお父様に伝えました。だから精霊伝説が必要なの。リンリン♪」
「リンリン♪小さいレテ、頑張れ!」
「頑張る?お父様は貴族の偉い先生にどうにかして話を聞かせて貰おうと提案しました。女の子はどうしても精霊伝説が読みたい。リンリン♪」
「リンリン♪お父さんに伝わると良いな」
「伝わらない、伝わらない。困った女の子はお小遣いを前借りさせて欲しいとお願いしました。精霊伝説を買うララリが必要なの。リンリン♪」
「リンリン♪どこの家庭も厳しい、貸してはくれないハズ」
「正解、正解。お父様は厳しい顔になって説教の時間になりました。ツマラナイ時間。女の子はガマンしました。説教が終わった後にお父様が甘いだけのドリンクをくれました。あんまり得意じゃない。リンリン♪」
「リンリン♪やさしいお父さんだけどレテと相性が悪い。いや、父親はそんなものさ」
「女の子もその事は知っていました。でも、それとこれとは別問題。ドリンクは飲まずに部屋に帰ってシルフィーにお話をしました。リンリン♪」
「リンリン♪すれ違い。いや、ぶつかり合っているのかな」
「お父様にもお仕置きが必要。精霊伝説の話をわざと話して私にイジワルをした。イタズラをしてお返しをいないとイケナイ、リンリン♪」
「リンリン♪ついにシルフィーさんのイタズラの場面!」
「女の子は思いつきました。お父様をびっくりさせて心配させようとしました。面白い遊びを考えました。シルフィーに風を地面から吹いてもらったら空に舞い上がれるかも。リンリン♪」
「リンリン♪いつもレテがやっていることだ」
「次の日の朝、女の子はお父様との訓練の時にシルフィーにお願いをしました。楽しい遊びをしましょう。大空に飛んだらどんなに気持ちが良いのかな。リンリン♪」
「リンリン♪コワイけど気持ちは良いか。いや、コワイ」
「シルフィーはお願いを聞いてくれました。お父様の近くで吹いていた強風が女の子の下に移動しました。女の子は空に飛び上がりました。お父様が地上で驚いている姿が見えました。リンリン♪」
「リンリン♪初めての空。気持ちが良かっただろうな」
「空の上はとても気持ちが良くて、昨日の説教の事もすぐに忘れました。風が弱まって女の子はゆっくり地面に降り立ちました。お父様は真っ青な顔で抱きつきました。リンリン♪」
「リンリン♪お父様は心配だったろうね」
「イタズラは成功しました。女の子はお父様を抱きしめてあげました。リンリン♪」