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騎士の心得

 三人はテーブルを囲み、それぞれマリー特製ドリンクを飲み一息をつく。モラもネアスからおすそ分けしてもらってチョビチョビとなめている。アーシャは美味しかったようでさらにドリンクを飲む。

「アーシャ、お昼ごはんは食べたのかな。まだなら冷めちゃったけど岩焼きそばが残っているわよ。ガーおじの分だったけど、来ないから食べちゃったほうが良いかな」

 レテはアーシャに食事を勧める。

「騎士団特製パンを持っていたんですがレテ様のオススメの岩焼きそばが気になります。でも、ガーおじさんに恨まれないか心配です」

 アーシャの顔は不安げだ。

「ガーおじは恨むけど気にしないのが一番です、アーシャさん。夕御飯まで取っておいてももったいないし食べたいものを食べると良いです」

 ネアスは率直に意見を述べる。レテも静かにうなずく。

「ガーおじには騎士団特製パンを代わりにあげるわ。アーシャからもらったって言えば許してくれるわよ」

 テーブルのアーシャの前にあるパンを自分のカバンに突っ込む。アーシャはさっそく岩焼きそばを食べ始める。

「美味しい、レテ様はいつもおいしいお店を選びます。どうやって選んでいるんですか?いつも直感は困ります」

 アーシャはレテの秘密を探ろうとする。

「今日はたまたまだと思う。僕も一緒にいたから確かだと思うけど、実際に聞かれると何か選ぶコツがあったのか」

 ネアスはレテの様子を思い起こそうとするが彼にはそんなに記憶力はない。

「直感。答えはそれだけよ、アーシャ。いつも美味しいお店を探している探究心が私に強い直感を与えてくれるのかな」

 レテは自分でも半信半疑に答える。

「探究心。レテ様は剣の訓練、精霊使いの修行に騎士団の任務。それだけでも大変なのに美味しいお店への探究心が残っているのですか?」

 アーシャはレテの力に驚く。

「探究心か。僕が追い求めているものは何なのか。きれいでやさしくてかわいい人なのか、そうでないのか」

 ネアスは迷う。

「ネアスはきれいでやさしくてかわいい私と一緒にいれば良いの、何をさらに探求する必要があるの?!」

 レテはネアスの発言に驚く。

「ネアスさんは騎士になりたいって聞きました。今度試験を受けるから私にもアドバイスを求められるかもしれないから準備をしておけと副騎士団長から命令を受けました」

 アーシャはネアスの迷いを察する。

「僕が騎士の試験を受けるなんて聞いてないよ。どういうことだろう、不思議な事もある」

 ネアスはさらに迷う。

「副騎士団長が勝手な事をするのはいつものこと、気にしない、気にしない。ネアスは余計な事は考えないで呪いを解く方法とゴブジンセイバーに専念するのが一番よ」

 レテはネアスの迷いを振り払ってあげようとする。

「レテ様、私にもその詳しい話を聞かせてもらっても良いですか。私もお二人の協力をしたいです」

 アーシャは攻めてくる。ネアスは押しに弱いので首を縦にふる。

「ネアスが構わないなら良いわ。アーシャは騎士団で一番頼りになる子よ。きっちり説明してあげるわ」

 レテはかいつまんでアーシャに呪いとゴブジンセイバーについて説明する。アーシャは熱心にレテの言葉に耳を傾けている。

「分かりました、レテ様。ネアスさんはレテ様の代わりに食べ物の味がしなくなる呪いを受けてくれたんですね」

 アーシャは何かを納得したように言葉にする。

「アーシャさんはずいぶんと好意的に出来事を受け取ってくれるな。僕が欲に目がくらんだが正解さ」

 ネアスは誤解を与えないようにする。

「ゴブジンセイバーに目がくらんだのよね。私には良さが分からないかな、訓練が足りていないみたい」

 レテはネアスの腰の剣を見てみるが、やはり欲しくはならない。

「レテ様を呪いから守ったんです。自信を持ってください。レテ様の味覚がなくなることは騎士団の損失です」

 アーシャは自信を持って発言している。

「不幸中の幸いさ。そうなることを予想でしていたなら自慢できたけど、無茶苦茶な話になってしまう」

 ネアスはテーブルを見て考える。

「世の中そこまで上手くいかないわ、ネアス。私はキミのお陰で呪いに掛けられなかった、アーシャの言う通り。私を助けたんだから自慢して歩いてみたら良いかもしれないわ」

 レテはネアスが自慢を言いふらして回るのを想像して笑みがこぼれる。

「代わりに私が騎士団の皆さんに宣伝をしておきます。レテ様を救って人が騎士団に入ってくるって言えば、喜んでくれます」

 アーシャは真面目に検討しているようだ。

「アーシャさん、やめてください。プレッシャーになります。僕はその期待に押しつぶされてしまいます」

 ネアスは二人の発言にびびる。

「みんなはどんな人物を期待するのかな。私を呪いから救い出した人が騎士団の試験を受ける。しかも、その人は私と一緒に行動をしていた。先入観をしっかり失くしてみるとどうなるかな」

 レテはその人物を思い浮かべてみる。

「精霊使いの資質もあります。レテ様以外で風の精霊の力を使った人を私は見たことはありません。確かレテ様以外の精霊使いの記録は残っていないはずです」

 アーシャはネアスの実力を評価している。

「ガーおじの方が優秀だと僕は思っている。記憶を失っているけど、戦士だって話だ。きっとすごい剣術を使えるんだ」

 ネアスはガーおじの力を信じている。

「ネアスはガーおじの事が好きみたいね。まったりほんわかおじのどこが良いか分からないわ。モテの参考にもならないし、どこか尊敬できる所があるかな」

 レテはせっかくなのでネアスに質問をする。

「私も興味があります。ガーおじさんはレテ様に文句ばかり言っている印象しかありません」

 アーシャはレテを尊敬している。

「ガーおじはレテに物怖じをせずに意見を言えるのが一番すごい。僕には無理さ、どうしても言いにくいことがある」

 ネアスは率直すぎる回答をする。レテはむっとする。

「今日のネアスくんはどうしたのかな、私に不満があるみたいね。言いたいことがあるなら言ったほうが良いわ、アーシャも一緒だし安心じゃないかな」

 レテはネアスをじっと見て今日の問題点を解決しようとする。

「ネアスさんはレテ様に不満点があるんですか。意外です、言いたいことがあるなら早い内に話した方が良いと思います」

 アーシャもレテに賛成をする。ネアスは逃げられないと感じ取り覚悟を決める。

「レテとアーシャさんは僕の気持ちが分からない。モテない気持ちを理解できるのはガーおじだけさ。レテのモテるためのアドバイスは参考にならない、これはゆずれない」

 ネアスは勇気を持って自分の意見を述べる。それを聞いて二人の女性は笑い出す。

「そうね、私には一生分からないわ。モテない気持ちを理解するのは難しいかな、ガーおじは苦労したみたいだからネアスの気持ちが分かるのね」

 レテは笑いながらもウンウンうなずく。

「モテる事が重要ですか、ネアスさん。私は面倒な事の方が多いと思います」

 アーシャも笑いながらも素直な意見を述べる。

「いや、苦労は人それぞれさ。難しい問題だ」

 ネアスは話を打ち切ろうとする。

「そうね、ガーおじが言いそうなことは……」

 レテは高速で考える。すぐにおもいついたようだ。

「モテるのが面倒と言ってみたいのじゃ。うらやましいじゃ、モテすぎてモテすぎて困るのじゃ、ネアス殿」

 レテがガーおじの真似をするとネアスの顔にも笑みが浮かぶ。

「ガーおじさんが言いそうです。私はそういう意味で言ったわけではありません」

 アーシャのガーおじの点数がさらに下がる。

「僕はそこまで考えていなかったけど、流石だ。レテ!」

 ネアスはレテを褒め称える

「うーん、私も性格が悪いのかな。こんな言葉を思いつくなんてショックね。もっとやさしい考えを持つようにしないといけないかな」

 レテは簡単にガーおじの真似が出来ることに困惑する。

「モテるのが面倒じゃない、ネアスさんはそう思っているんですか。分かりました」

 アーシャは良い考えを思いついたようでレテに近づき耳打ちをする。

「面白いわね、アーシャ。ネアスも私たちの気持ちが分かるかもしれないわ。試してみる価値はあるわ」

 レテはアーシャの案に大賛成のようだ。ネアスは二人の会話を聞き取ることが出来ずに気になって仕方がない。

「いたずらされるのは、なれているから大丈夫。小さい頃はいたずらもしたけど引っかかることも多かったな」

 ネアスは悪いことが起きないことを祈る。

「心配しないでください、ネアスさん。危険な事ではありません。この話はこれまでにして報告があります、レテ様」

 アーシャはレテを訪れた理由を思い出す。

「デフォーね。彼は何の目的があってこの街を訪れたのかな、手がかりになることが聞けたならうれしいわ」


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